内容説明
文学的友情で支え合った中野重治との永遠の別れ。熱く深い思いで綴る感動の名作。――1979年8月、作家中野重治が逝去した。中野重治に小説家として見出された佐多稲子は、この入院と臨終に至るまでの事実を、心をこめて描いた。そして50年にわたる、中野重治との緊密な交友、戦前、戦中、戦後と、強いきずなで結ばれた文学者同士の時間を、熱く、見事に表現した、死者に対する鎮魂の書。毎日芸術賞・朝日賞を受賞した、感動の文学作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
19
中野重治の死去を回想したエッセイ。というよりエッセイ的な私小説。癌による余命宣告の描写は緊張感溢れる描写になっている。そして、中野重治が佐多稲子を小説家に導いてくれたなれそめ、最初は随筆(エッセイ)を書いていていたのだが、それを小説に拡げてみなさいと言ったのが中野重治のアドバイスだった。佐多稲子の小説家としての生みの親でもある。その惜別の感情が、中野重治の追悼文というスタイルでありながら作家としての小説を書くことで、生きながらえてきた彼女の小説家としてのメタフィクション小説と言えば言えるのかもしれない。2022/12/30
あや
4
戦前戦中に渡る反戦活動。驢馬の同人である中野重治と佐多稲子の友情。中野重治の死が佐多稲子さんにとってどれだけおつらいものであったか。中野重治の死がどれだけ日本という国にとって大きな損失であったか。たぶんそれを伝えることは難しい。抑制された筆致で中野重治を見送った夏のことを書かれている。友人代表として中野重治の葬儀を行う際、中野重治との友情において自分がもし男であったなら、という佐多稲子さんの述懐が重い。2020/03/13
多恵
4
中野の死、までが抜群に良い。同志としての深い愛情をおもう。2012/08/30
あや
3
新潮文庫版を学生時代に愛読していたが丁寧な解説や年譜に惹かれて講談社文芸文庫版も買い読み直す。中野重治との長年にわたる友情と死が静かな筆致で描かれている。中野重治の優しい人柄がとてもよく描かれている。学生時代に愛読した中野重治の著書も再読したい。2019/01/22
やまふじ
2
30年ぶりくらいで再読。 作家・中野重治が亡くなる前後のエピソードを描いた随筆。作家の佐多稲子の同人(同志)以上、男女の関係未満の中野への淡い感情???の濃淡を率直に書いている。芥川、多喜二、室生犀星、堀辰雄、平野謙、埴谷雄高、小田切秀雄、西沢隆二そして夫の窪川鶴次郎などなど中野と交流のあった巨匠たちのエピソードが惜しげもなく書かれているのも文学史的資料として価値が高い。それにしても共産党からの中野の退場(除名?)を求めたのがかつての「驢馬」同人の詩人の西沢隆二であったという話しが何とも悲しい。2024/09/24
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