内容説明
評価の低かったグールドの意義と魅力を定め広めた貢献者の、グールド論集。『ゴルトベルク』に始まるバッハの他、モーツァルト、ベートーヴェンなど、多角的に論じる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kajitt22
38
数十年前、初めて聴いたグールドの『ゴルトベルク変奏曲』(81年録音)の素晴らしさを、その低いハミングとともに思い出した。吉田秀和氏はこの演奏を「前例のない静けさ、各声部それぞれの流れの透明度が加わり、聴き手を自らの内面世界に誘う」と書いている。平凡な印象だったベートーベンのソナタ5.6.7番を、読後改めて聴いてみると、新たな光が差し込んでくるのが見えるから不思議だ。グールドの登場からその死後まで、折々の評論は一貫して音楽の創造者グールドへの敬意と愛情に満ち溢れている。2019/07/24
じゃがいも
18
吉田秀和さんグールドにべた惚れ。エキセントリックな天才とか狂気すれすれとか恣意的な演奏など評価が真っ二つに別れるけど、「演奏の稀代の美しさ」、「冷静に注意深く聴いているが、そうすればするほど感銘は心の深いところに通じ喜びとなり満ちあふれる」、「表面の艶々した瑞々しさとその下を絶えず生きて流れる抒情の味わいの気韻の高さ」、「バッハの中にまだ知られていない無限の新しさが内蔵されていることを気づかないわけにはいかない」など熱意の言葉はびしびしと伝わります。2019/05/15
広瀬研究会
10
吉田さんは日本の音楽界において、早くからグールドを評価していたうちの一人だけど、その実演にふれる機会には恵まれなかった。ということが再三述べられていて、それだけに映像でグールドが演奏する姿を見たときの印象を書いた『テレビで見たグレン・グールドの演奏』や『グレン・グールドを見る』にはちょっとした感動を覚えた。すれ違っていた二人がついに……みたいなしょーもない錯覚をしてしまった。2022/11/03
明石です
5
うつくしい批評。2023/12/07
訪問者
4
吉田秀和が一番情熱を込めて、美しく語ったのがグレン・グールドについてである。遠い昔、氏の『1枚のレコード』を読み、「コールドベルク変奏曲」のレコード(当時は1955年版しかなかった)を買いに行ったのは、忘れられない思い出である。2024/07/04