内容説明
地球をおおいつくそうとするひとつの世界システムに「地域の論理」たちは繊細なたたかいを挑む。閉ざされつつある世界に、新しい超空間への通路を開く。ボストーク――東の方。人間を乗せた最初の宇宙船の名前である。偉大なる叡智=ソフィアは、科学技術文明と近代資本主義が世界を覆い尽くす時こそが、真実の危機だと告げる。バルトーク、四次元、熊楠、マンダラ、シャーマニズム、製鉄技術、方言、映画とイヨマンテ……。多様なテーマで通底する「無意識」に、豊饒な叡智を探求する。/『東方的』は、……西欧的な知のあり方の行き詰まりを踏まえて、「東方的」な「ソフィア」(叡智)の方向に新たな可能性を見出そうとした、美しい希望の書物である。(略)その「明確なモチーフ」は……、「第四次元、あるいは日常的なリアリティを超えた高次元の霊的な世界が、われわれが普段住んでいる物質的な世界と接触した時、何が起こるか」ということに帰すのではないかと思う。――<沼野充義「解説」より抜粋>
目次
はじめに
東方的
四次元の花嫁
高次元ミナカタ物質
脳とマンダラ ポストモダン科学のチベットモデル
エコソフィアとしてのシャーマニズム
鋼鉄はいかにして造られたか
方言論
映像のエティック
エピローグ 木のように、森のように
この本のための小辞典
解説 精神と物質が直接出会う場所へ(沼野充義)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
非日常口
15
製鉄・タタラで「たましいの探求」と「金属の技術」で貨幣がなぜ金属に依存するようになっていくのか、その切り口が垣間みれたような気がする。スキゾフレニーにならぬようドルジェを持っているという話があったが、資本主義において物神性を持った貨幣はむしろ分裂っぷりを加速しているように思う。別の章でエイデルマンのニューラル・ダーウィニズムがあったが、貨幣は高次元的に結合しているかといえば、商品の中の一形態にすぎないのだから、むしろスキゾフレニー的分裂したものではないか。キュビズム/抽象芸術/新陰流と武具・農具。2014/10/14
Yusukesanta
14
ベラ・バルトーク大好きで、やはり超絶カッコいい創造を成し遂げた唯一無二のお方なのだなぁと改めて再認識、最初の章を読んで「ありがたい」とも思った...バルトークもっと聴きたくなった。モダンなもの+途轍もなく古代的なもの=アヴァンギャルドという詩人マンデリシタームの定義は、バルトークにも当て嵌まる。ハンガリーの民謡、聴いてみたい。巻末に載ってる偉人たちの紹介がやたらカッコいい。深沢七郎とか...2016/11/23
H2A
13
綺羅星のように雑多なオブジェが鏤められてお互いをキラキラと反射するような書物。テーマは西欧的枠組みと対峙する『東方的』な知性。ロシア語で言うボストーク。ブルガリアのソフィアからイコン、ロシア・アバンギャルド、四次元、南方熊楠、イヨマンテ、チベット密教、最後にジョナス・メカス。あきれるほど多彩な題材が東方というキー概念に引き寄せられて自在に語られる。中沢新一を読んだのは本当に久々のことだったが今更ながら感心させられた。最後にこの本は紙で読んだ方がいいと思う。2021/03/29
NагΑ Насy
4
深沢七郎の笛吹川とハンガリー語についての方言論を再読。チェルフィッチュの舞台の癖の強い身振りのことを思う。2014/02/04
NагΑ Насy
2
南方熊楠と幽霊、銭湯でのはなしなど。一編だけ再読。2013/11/05