内容説明
生物学・民俗学から神話・宗教学に精通、あらゆる不思議に挑んだ南方熊楠。那智の森の中に、粘菌の生態の奥に、直観された「流れるもの」とは何か。自然や人間精神の研究の末織り上げられた南方マンダラの可能性とは?後継者のいない南方熊楠の思想、「旧石器的」な思考の中に、著者は未来の怪物的な子供を見出す。対称性理論への出発点となった記念碑的著作。
目次
第1章 市民としての南方熊楠
第2章 南方マンダラの来歴
第3章 燕石の神話論理
第4章 南方民俗学入門
第5章 粘菌とオートポイエーシス
第6章 森のバロック
第7章 今日の南方マンダラ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
72
読メを利用していたからこそ知った本。もっと早くに読みたかった。著者を評論家と見くびってたかも。著者としては初期の仕事か。熊楠を語りつつ彼の独自の思想を展開。とにかく読んで面白い。繰り返すが、もっと早くに読みたかった。推薦。2023/11/14
イプシロン
42
河出文庫版『南方熊楠コレクション(全五巻)』を読むのは大変そうだ。けど、南方の思想を知りたい向きにはお勧めできる。といっても中沢新一さんの解説によるものなので、熊楠自身の文章に触れたいなら、コレクションを手に取るしかない。しかし、大枠で熊楠の思想の中心である「南方マンダラ」を知るにはうってつけの著作といえる。最後は華厳経にある三身論(法身・報身・応身)や八識論の奥底である阿頼耶識にまで言及しているので、仏教の知識がないと理解が困難かもしれない。天台宗などは八識の底に阿摩羅識(仏性=如来蔵思想)を立てるが、2020/01/21
あなた
13
シンプルで読みやすくかつ面白かった(知的興奮)。彼の折口信夫に関してもそうだけど、このひと昔人(本書でいえば南方熊楠)の「現代への召喚」の仕方がうまい、と思う。すごく手際がよいっていうか鮮やかに洗練された手つきでいま・ここに現前させるっていうかね。つまり、中沢新一って思想家ってよりも「召喚士」って感じがするんだよね、俺には。それでみんなコロッとまいっちゃうんでしょ2010/09/13
しずかな午後
12
粘菌や隠花植物の研究、洋の東西をまたにかけた比較説話学、政府による神社合祀への反対運動、真言密教とマンダラ、猥談、心霊学…。ひとりの人間の活動とは思えないような、南方熊楠のエネルギッシュな知的営為に対し、中沢新一がそれを統一的なビジョンのもとに俯瞰し、さらにその可能性を発展させようとする。中沢によれば、熊楠の学問というのは、この世界を複数のエネルギーが運動し、交錯し、混合する、そういう場として解明することにあったようだ。それが粘菌の観察にも、説話の分析にも、南方マンダラにも現れている。2026/03/31
みのくま
10
中沢の整理によると、熊楠は西洋(ポリフォニー)と東洋(マンダラ)、動物と植物、古代と近代といった二項対立の、更にその根源にある共通の「何か」を探求した。ただ熊楠のアプローチの仕方が独特すぎてよく理解できない。中沢の解説もそれに輪をかけて難解である。ただ、本書は中沢ののちの活動や著作につながる重要な試金石になっている事はよくわかる。熊楠のエコロジー思想は緑の党に、粘菌研究は対称性人類学に発展する事になるのだ。しかし本書がどの程度熊楠の思想を汲み取っているのかは判断が難しい。「中沢熊楠」である事は確かだろう。2021/06/14
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