内容説明
依頼人からの無理難題を解決するのは、おのれの腕1本のみ。京流の剣の達人にして、まだ見ぬ伝説の強敵と対峙することを夢想し、胸を踊らせる。だが普段は、ひたすらに不機嫌。「2」という数字とお人好しは、大嫌い。雇われるのはもちろん、我慢ならない。豪快すぎる男の生き方を描いた、7話を収録。期待の新鋭が放つ、痛快時代小説。剣の達人にして、ひたすら不機嫌な男が己の力で無理難題を解決する!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やまほら
8
机龍之介・眠狂四郎・木枯し紋次郎のような、めっぽう強くて冷酷な(ニヒルな)人物が好きな私にとって、その手の小説では久しぶりに「当たり」。吉川英治『宮本武蔵』ではひ弱なイメージの吉岡一門(ずいぶん前に読んだので違うかもしれないが)だが、この主人公は全く違う。おさえとの関係も絶妙。続刊が既に文庫化されているが、さらに続くことを期待したい。2013/04/26
小音
8
面白い主人公の設定が良かったです。続編も読んでみたいです。2012/02/27
ぐうぐう
7
『吉岡清三郎貸腕帳』の読みどころは、なんと言っても主人公・吉岡清三郎のキャラクターだろう。よく「キャラ立ち」とひとことで言うが、キャラを立たせることは、とても難しいことだ。しかし、犬飼六岐は、清三郎を個性的で、魅力的で、物語を牽引していく人物に、見事に造形している。そんな豪腕なキャラのそばに、おさえという控えめな、しかし印象深い女性を配置する辺りも、実に憎い。2012/08/05
タツ フカガワ
6
貸腕業とは、腕に覚えのある剣で依頼者の問題を解決する生業のこと。峰打ち無用、腕も足も首も平気で両断。まさに無情、冷血漢のような剣客が吉岡清三郎。出身は京、嫌いな字は「二」(二天一流)、約束に遅れてくること(巌流島の対決)、子どもに乱暴すること(一乗寺下り松の決闘)で出自がわかろうというものです。読み始めは作り過ぎのキャラかと思いましたが、ところどころにくすっと笑うユーモアもあって徐々に血の通う剣客になっていきました。最後の凄絶な剣劇と、下女おさえの心の変化に引っ張られて続編へ。2017/12/07
めにい
6
ニヒルに徹した主人公と、井戸の底の墓場のように陰気な下女。時々現れる仏の質屋が好対照として存在する。吉岡って、あの吉岡一門だったのね。手に届かない剣豪を憎む男という設定もなかなか。2014/10/20