内容説明
権力中枢を狙った2・26事件、無謀と言われたアメリカとの戦争、世界史に類を見ない高度経済成長……令和になった今だからこそ、昭和史を見直す意味がある。首相から皇族、軍部の指導者、いち兵士まで4000人以上に取材した第一人者が著した昭和史入門の決定版。
【常識を覆す昭和史の新しい読み方】
◎2・26事件で政治構造が変わった
◎無思想だった東條英機と軍幹部
◎対米開戦直後に生まれた「幻の世界分割計画」
◎真珠湾攻撃直後に株価は10%の急騰
◎戦後の歴代総理たちは8月15日に何をしていたか
◎昭和天皇が挑んだマッカーサーとの駆け引き
◎日本人の欲望の象徴だった田中角栄
◎「歴史修正主義者」の主張の背後にあるものは
※本書は、2007年に文春新書から刊行された『昭和史入門』の増補新版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
55
『昭和史入門』の増補新版のようだ(前著未読)。内容は昭和をいくつかの段階に区切り、事件だけでなくその時代を生きた人々の声や生き様を組み込みながら、歴史的に位置づけていく。したがって通史的ではなく、必ずしも入門に適するとはいえない印象。むしろ著者の歴史観の披瀝のように思えた。終章「日本は「右傾化」しているのか」を読むと、かつて著者が「保守的歴史論者」と呼ばれたのが、近年評価を変えた理由がよく分かる。著者が変わったというより、周囲の状況が変わったのだ。むしろ著者の立ち位置はかなり一貫性があると感じた。2020/02/27
西
22
読んでいて、やはり、なぜ日本が戦争に進んでしまったのか、今がどのような歴史のうえに立っているのか気になってきた。東条英機だけが悪人だったわけでは決してない、冷静な目を持てるか、他人の不幸を無視せずに見つめられる強さが必要だと。昭和史をもっと勉強したいという気持ちに。極端な意見ではなく、いろんな意見を先入観なく吸収できる度量が必要とも思う2019/07/15
みなみ
13
Kindle読み放題で。昭和とは何だったのか?という分析の一冊。戦前だけでなく戦後日本史も取り上げられているので、広い時代を扱っており参考になる。近年の「日本の右傾化」についての分析もある。吉田茂の、昭和の日本が戦争に突き進んだ時代は日本がおかしくなってしまったのだ、という述懐を載せており、保阪氏も賛同している。しかしそれはどうなのだろうか?高度経済成長期が日本人の国民性にマッチして成功したという論が同じ本にあるわけだが、ならば、日本人の国民性の最も悪いところが出てしまったのではないだろうか。2022/07/05
fseigojp
13
これお値打ち品 まとまりがいい2019/12/23
パトラッシュ
11
人も国家も過ちを犯すというのが、長年昭和史を追求してきた保阪史観の根本だ。その時々に決断を迫られた指導者たちがいかに誤ったか、多くのインタビューを重ねて解き明かそうとする姿勢は「失敗学」の研究に通じる。敗戦へと突き進む昭和史に見られる失敗の例証に学び、少しでも令和の時代に生きる人の役に立てればとの思いがにじむ一冊。そのため謙虚な歴史との対話の努力が必要という結論には賛成だが、自分たちの国も民族も一切過ちを犯していないと信じて疑わない相手にどう対処すべきか。国際政治では謙虚とは悪であり弱さとされるのだから。2019/08/16