内容説明
21世紀初頭、世界で初めてオランダで合法化された安楽死。同国では年間6000人を超え、増加の一途である。容認の流れは、自己決定意識の拡大と超高齢化社会の進行のなか、ベルギー、スイス、カナダ、米国へと拡散。他方で精神疾患や認知症の人々への適用をめぐり問題も噴出している。本書は、〝先進〟各国の実態から、尊厳死と称する日本での問題、人類の自死をめぐる思想史を繙き、「死の医療化」と言われるその実態を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
73
国内外の関連事象と法制度。経緯や背景に垣間見る「死」への取り組み。各種言葉の定義・解釈の統一は、もれなく難題。”当人の意思”の様々な件は、特に考えさせられる。自己決定権を含めた”権利”に対して、他者の裁量に”依存”するのも酷。一方、”自発性”を喪失した状態で、意志を求めるのも酷。目の前の現実の『安楽死と尊厳死』。記載定義は腹に落ちる。加えて、法制化による権利から義務、の問題提起も同感。「人間は自由にして依存的な存在」が真理かもしれない。因みに、日本に初めて安楽死を紹介したのは鴎外の『高瀬舟』とのこと。2019/01/06
ちさと
42
「死を選ぶ権利」は憲法の保護を受ける基本的人権と言えるだろうか?自己決定権が憲法の至上の価値である尊厳の内実の中核を成す以上、死への介助を全面的に否定することは「生きる権利」を放棄できなくして「生きる義務」を作り出してしまうと私は思う。本書は安楽死や尊厳死を合法化、または民間団体が独自に自殺介助を行っている国の足跡と現状、課題を多面的に学ぶための本です。答えはありません。それぞれの置かれた状況によって違う言い分があるでしょうね。でもセネカの言うように古代から、考えるべきは常に人生の質であって量ではない。2019/03/07
樋口佳之
40
先端医療技術がもたらす人生の最終段階の医療の倫理問題を提起するとき、医療や技術が発展したからこそもたらされた問題という側面と、医療や技術やケアがまだ十分でないからこそ起こっている問題という両方の視点からとらえ直すことが求められている。/開発研究によってとらえ直しができたとき、安楽死は是か非かという議論の前提が根本的に変化する可能性がある。/WHOの健康概念の問題点を含め、広い視点を読めたと思う2020/07/28
香菜子(かなこ・Kanako)
40
安楽死・尊厳死の現在 最終段階の医療と自己決定。松田純先生の著書。安楽死・尊厳死は認められたほうがいいと思うけれど、安楽死・尊厳死の名の下に本当は安楽死・尊厳死を希望していない人、精神疾患や認知症の人まで安楽死・尊厳死させられるようなことは絶対にないようにしないと。精神疾患や認知症の人の人権がしっかりと守られる社会でないといけない。2019/08/12
hatayan
34
海外の事例や思想史を紐解きながら安楽死の是非を考える一冊。 自殺の思想史を紹介する章が圧巻。優生学的な思想の誘惑に抗って弱者を助けるという共感の能力が人間を進化させてきたと説くダーウイン。死を自己決定することで人間は生きるに値するとしたニーチェ、国家による安楽死を推奨したドイツの法学者など。相模原の障害者殺傷事件の主犯が重なりました。 著者は安楽死の発想に理解を示しつつも、病気で苦境に陥っても適応させていく医療観、疾患を抱えていても乗り越えていこうとする健康観を対置。議論の前提はまだ揺れ動きうるとします。2019/04/15
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