内容説明
ルターに端を発する十六世紀ヨーロッパの宗教的動揺は、イエズス会というまったく新しい組織を生んだ。霊操と教育を重視し、異教徒への宣教を実践するイエズス会は、ポルトガル・スペインの植民地開拓と軌を一にして、新大陸やアジアへと進出した。かれらの思想や布教方法はどのようなものだったか。いかなる経済的基盤に支えられていたのか。現地社会に与えた影響や「キリスト教の世界化」のプロセスを詳細に検証する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
52
ルターの宗教改革から説き起こしているが、托鉢修道会やイエズス会の活動を「前向き」な改革と捉えている印象。ラテンアメリカ、モンゴル帝国から元以降の中国、そして日本での布教活動を、いわゆるポルトガル・スペインの対外進出と絡めながら、カトリック側から書き起こす。特にヌエバ・エスパーニャ、つまりメキシコの動向は面白かった。一方日本の布教活動についてはちょっと物足りない印象。また、イエズス会のその後に触れられていないので尻切れトンボな感じも受けた。バチカンと改革派修道会の関係をもう少し詳しく書いて欲しかった。2020/04/28
みこ
20
日本の戦国史から西洋を眺めるとある日突然鉄砲がやってきてその後追いでキリスト教の宣教師がやってきたような印象を多くの人が持っているだろう。しかし、西洋から見ると日本にキリスト教がやってくるのは必然だったと言える。そんな内容の一冊。名前だけなら聞いたことのあるイエズス会も宗教改革からの流れで東洋に活路を見出していた。いや、その宗教改革というもの自体が西洋史の中で文明開化や産業革命に近い重要なエポックだったことも本書で知らされた。歴史を様々な角度で俯瞰するのはやはり面白い。2019/01/02
こぽぞう☆
13
シリーズ4冊目。この辺になると「黄金伝説」の後だ。イギリス国教会がどのくらいの新教なのか、ずーっと知らなかった(知りたかった)が、どうやらカルヴァン派らしい。そして、いよいよイエズス会。しかし、日本に来たのはイエズス会だけではないらしい。それから、最新刊はこの本だが、まだ続きがあるらしい。2019/10/22
かんがく
9
ヨーロッパでの対抗宗教改革、ザビエルなどのアジア宣教、新大陸での宣教の3つがそれぞれ結びつきながら記述されて広い視点でキリスト教の広がりを学ぶことができた。2024/09/20
田中峰和
8
日本での布教で活躍したイエズス会の誕生は16世紀で、フランチェスコ会やドミニコ会などに比べるとその歴史が浅いことを再認識。モンテコルヴィーノが13世紀、モンゴル帝国への布教に貢献し北京にカトリック教会を建てたのだから、フランチェスコ会の歴史は古い。イグナチオ・デ・ロヨラがイエズス会を設立したのは、宗教改革への対抗措置でもあったが、フランチェスコ会が新大陸に進出したのに対し、新勢力としてはアジアで布教活動を行った。日本での新旧会派の対立は激しく、フランチェスコ会はイエズス会に嵌められ26聖人の殉教を出した。2019/04/14