内容説明
俗世間を離れ、自らの心の内を見つめる修道院。だが12世紀、突如その伝統から大きく離れた修道会が生まれた。騎士修道会と托鉢修道会である。かたや十字軍となって聖地エルサレムやイベリア半島、北方で異教徒と戦い、かたや聖フランチェスコらが都市のただ中で民衆の信仰のあり方をラディカルに変革した。これら〝鬼子〟ともいうべき修道会の由来と変遷を、各修道会の戒律や所領経営などにも注目しながら通観する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かごむし
35
中世ヨーロッパの修道会。予備知識も何もない以前に、途中までまるで興味がわかなくて読むのがしんどかった。けれど、学者の丹念な記述の積み重ねというのは一つの世界を築き上げていくものらしい。この時代の複雑な事情、世俗の権力と、宗教的な権力のバランス、東西世界の交流、軍事的な力、商業システム。なにより、そこに生きる民衆の欲求や宗教心といった、時代の底流をなすうねり、人々が生きる社会の背景というものが透けて見えてくるようで興味深かった。また一つ、知らないことを知る読書であり、もっといろんなことを勉強したいと思った。2019/11/04
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17
中世ヨーロッパのキリスト教の急進的運動の産物として、聖地奪還のため異教徒に対抗する『騎士修道会』と、神との合一のため社会に生計を依存して生活する『托鉢修道会』を並列して説明するのが本書の独自性。/ではあるが、発生地やその精神性も異なるためあまり著者の試みは成功していないように見える。内容がとっ散らかっており読みづらかった。/騎士修道会については組織運営・所領経営・財源など細かい技術が多く参考になった。遠隔地の貨幣輸送と為替の役割を担い、実質的に東西ヨーロッパの金融機能を担っていたというのは目から鱗。2022/10/18
こぽぞう☆
15
シリーズ三作目。テンプル騎士団、(ここではホスピタル)聖ヨハネ騎士団というのが、修道士だったことは、塩野七生さんの「十字軍物語」まで知らなかったのだが、ここでは「修道騎士会」となっているので、初めてでもわかりやすいかも。托鉢修道会やベギンの諸々は、現代日本人からすると、ヒステリーか統失か、と思っちゃうが。とはいえ、素晴らしい美術品を過去に観ているので「頭おかしい」と言い切る気もないが。2019/09/14
MUNEKAZ
13
12世紀に始まった騎士修道会と托鉢修道会について。十字軍運動は聖戦を生業とする騎士修道会を生み、また宗教的な「攻撃性」の高まりは都市において托鉢修道会という新しい潮流も生み、それは後年の宗教改革に繋がっていくというのは面白い。個人的には一般書で取り上げられることの少ないイベリア半島の様子についても触れられているのが興味深かった。エンリケ航海王子やヴァスコ・ダ・ガマなど大航海時代の立役者たちも、この地の騎士修道会所属であり、彼らの海外布教にかける情熱の背景が伺える。2018/01/10
羊山羊
12
本著は、最近でこそ日の光を浴び始めてきた、ヨーロッパの中世にまつわる本だ。中世において生まれた、騎士修道団と托鉢修道会を紹介する。以前、塩野七生氏の「十字軍物語」を読んでいたこともあり、騎士修道団の所はとても面白く、またおさらい的なノリで読むことができた。特にこの中世の時代は、十字軍が活躍した時代であり、イスラム教徒との戦いの中で、ある種その副産物として生まれた騎士達を知ることは、当時のキリスト教の雰囲気を知る上で非常に参考になる。本著中では、塩野氏の様な推測まで混じえて語る戦闘の臨場感はないが、→2025/07/31