内容説明
ぼくには仲良しの兄・サイモンがいた。でも死んでしまった。ぼくはサイモンに会いたくてたまらない。19歳になったマシュー・ホームズは、統合失調症の治療の一環として、自分自身について書いている。大好きだった兄サイモン、ダウン症だった彼の死は、幼かったマシューの思いつきがもたらしたようなものだった。罪の意識に苛まれるマシュー。彼には「ぼくを忘れないで」というサイモンの声がいつも聞こえている。精神科病棟の看護師だった著者だからこそ書ける、病める青年の苦しみ、不安、喜び、そして家族のこと。サイモンとマシューの兄弟を、あなたは忘れることができないだろう。コスタ賞の新人賞と大賞を同時受賞した傑作小説!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
170
図書館の新刊コーナーで見つけて読みました。コスタ賞(イギリスの大きな文学賞)大賞受賞作もネイサン・ファイラーも初読です。本作は、統合失調症家族喪失物語の佳作でした。派手さはありませんが、しんみりと心に突き刺さります。イギリスの家庭でも、NINTENDOはかなり浸透しているんですね。2019/06/13
はる
63
大好きだった兄を幼い頃に亡くしたマシュー。19歳になった彼の心の中では今でも兄が生き続けていた……。統合失調症のマシューの語りで綴られる物語は断片的で、時系列もあやふや。正直かなり忍耐のいる読書でした。戻らない兄への思慕。純粋過ぎるマシューの想いは哀しい。次第に深刻化するマシューの症状。だが、ある人物がきっかけで彼は僅かに救われる。穏やかなラストはしみじみとした余韻を残します。2019/06/21
ヘラジカ
53
あらすじを知っていたら読まなかったかもしれない。地味で苦手な内容だが、時折胸が痛くなるほどの筆力があって、思わず息を詰めて読んでしまう部分がある。本の紹介でもどんな人物が主人公かということは書かれていないので、あえて自分も書かないでおこうと思う。コスタ賞は高名な文学賞なのである程度の信頼感があったが、これも中々良い小説だった。重ねて言うのが申し訳ないが、本当に地味なので内容は知らずに手に取るのが良いだろう。2019/06/02
信兵衛
27
マシューがいつまでも胸に抱える兄サイモンへの兄弟愛、そこに胸打たれる物語2019/06/26
くさてる
24
仲良しの兄、サイモンの死の影響を抱えたまま成長していくマシュー。サイモンの声を聞き続けるマシューはやがて……というお話で、解説もあらすじもなにも見ずに読み始めたので、てっきりファンタジーか幻想系の展開の話になると思い込んでいたもので、よりリアルでやるせない方向に話が進んでいくのが切なかったです。それは私が悪い。しかし、そのリアルはこのお話を作り上げるためのリアルで、実際にこの世界に来ている統合失調症の患者さんにとってのリアルでない、それは忘れたくない。しかしまぎれもなく良いお話でした。救いがありました。2020/01/11
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