内容説明
中央と地方、格差社会、転落する男と女――時代を超えて清張ミステリは読み継がれる。昭和文化や都市論、映画に造詣の深い評論家が、「東京」「昭和」「映画と小説」「旅」など、さまざまな切り口から不世出の作家の魅力に迫る。これまでに書かれた清張にまつわる文章に書き下ろしを加えた決定版・松本清張ガイド。 「一億総中産階級と言われた一九八〇年代のバブル経済期に誰が、その先に格差社会が来ると想像しただろう。しかし、いま、松本清張の初期の作品を読むと、日本の社会は、いまもむかしもそれほど変わっていないのではないかと思ってしまう」(本書より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
132
東京に対する地方の怨恨という観点から、松本清張を読み解く試み。金と権力が集中し光り輝く強者としての東京に上から目線で見下されると、弱者たる地方は繁栄から見放された憤りや嫉妬、憎悪に囚われる。そんな東京から逃げたり報復する光と影の錯綜が、作品のドラマを形作っていると。特に高度成長に沸いた昭和は、その格差を一層強烈に照らし出した。『ゼロの焦点』の佐知子や「張込み」の殺人犯、『霧の旗』の桐子などは代表格であり、その違いを身にしみて感じていた読者に支持され、繰り返し映像化されたと見る。無意識な怨恨こそ人の原点か。2026/05/02
こばまり
66
興奮したのは山梨贔屓であったという考察。甲府の地味な人造湖、千代田湖が登場する短編まであるとは恐れ入った。煮しめたような古本屋の前で、年端もいかぬ私に、ここに清張が来たんだよと小鼻を膨らませていた父の姿を思い出す。2019/07/16
アヴォカド
13
時々無闇と松本清張が読みたくなるのはなぜなんだろうか。多作なので、中には結構トホホな物もあったり、小道具が古くなっているのはどうしようもないのだけれど、それらを差し引いても余りある、何か人の変わらない部分を差し貫いているのだろう。いろいろ読み返したくなり、もう家にはないかなあと思いながらも探したらあったあった。宮部みゆきが「名作中の名作。これを読まずしてミステリを語るまじ」とまで言う『一年半待て』も再読してみた。唸った。2021/01/02
hitotak
8
主に昭和20年~30年代に書かれた清張作品と映画についての解説・エッセイ本。東京とは比較にならないほど文化的に遅れ、貧しい地方を舞台に書かれた作品が多い。ハッピーエンドなど皆無、謎解きが成されていても後味が悪い作品ばかり。戦後日本の影の部分が書かれた清張作品は当時大いに読まれ、次々と映画化されていったおかげで、今はなくなってしまった地方の風景も映像になって残り、歴史的資料としても貴重なものになっている。2019/06/09
Gen Kato
7
松本清張作品および映画化作品ガイド。結末をがっつり語ってしまっているので、原作を未読の場合は読まない方がいいかもしれない(そのぶん踏み込みが深くておもしろいのだけれど)。映画、未見のものはもちろん、以前観たものもまた観たくなるなあ。2020/01/07
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