内容説明
女は皆、平和を装っているだけ。ライターの天音は、妻としても職業人としても自己不全感を抱いていた。ある日、友人の紹介で俳優の朔也と出会う。人とは違う肉体を生かして役者になった朔也を取材するうち、彼の周りの女性たちが変貌した瞬間を知る。いい子の呪いに苦しむ鈴美、男性経験のない冬美恵、朔也の妻・理都子、そして天音自身も――。未知の私が現れる5編。『幸福なハダカ』改題。（解説・寺地はるな）
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
173
タイトルからしてＲ１８文学賞作家さんらしさ満点の作品です。しかし、タイトルほどのド直球なエロさはなく、むしろ四人の女性それぞれの目線から描かれたある意味ピュアな物語にすっかり引き込まれました。本作もまた女性が読むと、年代や環境によって全く様々な感想がうまれるんでしょうね。'特異'な１人の男性を巡り、四人の女性がかかわる展開はテンポよく、ストレスを感じるコトなく読了でした。解説をお気に入りのほっこり作家さんである寺地はるなさんが書いているのが、良かったです。『主婦病』に続き、期待を裏切らない内容でした。2020/02/28
スエ
75
「俺、歩くファンタジーなんだよね」。6歳の頃から、身長と体重が変わっていない。低身長症の朔也、42歳。彼は女性の裸を撮影する。 自らの心の鎖でがんじがらめになっている女性達を…。 そして、救われてゆく女たち。 とても…不思議な物語…。2020/09/14
Shoji
52
朔也と朔也を取り巻く訳有り女4人のお話。朔也は成長ホルモン不全により低身長症なる病気、小学生から成長が止まったまま。しかし、外見と心は大人、もちろんセクシャリティも。その朔也、なかなかナイスガイ。スネに傷があったり、心が風邪を引いてしまった女子たちがわんさか集まってくる。で、朔也の前で惜しげもなく肌を晒す。決して汚くもないし露骨なセックスもない。朔也は人間の弱い部分をきちんと理解して、丁寧に接しています。だからもてるのか。見習いたい、見習いたい。2019/01/22
taiko
50
成長ホルモン分泌不全性低身長症の朔也と、4人の女たち。… 女たちにはトラウマや悩みがあり、それぞれが苦しんでいた。 朔也と出会い、彼の前に脱ぎ、彼に撮影をしてもらうことで、解放され一歩を踏み出すようになる。朔也にも、病が故の不安があり、それを笑顔で覆い隠して明るく生きている。誰かに共感できることはなかったですが、親に恵まれなかった鈴美の境遇は読んでいて苦しくなりました。すっきりと解決はしませんでしたが、鈴美には幸せになって欲しいなと思います。誰もが自分らしくいていいんだと背中を押してくれる作品でした。2020/04/05
けいこ
39
女性の裸を撮影する1人の男性と、彼に関わる4人の女性の連作短編集。彼は病を受け入れ、孤独を破り、自身を愛してきた。その愛を、今度は孤独で殻に閉じこもっていた女性たちに向ける。服を脱がせ裸を撮影する行為は、実は彼女たちの心の殻を脱がせていくもの。『もう、これが自分っていう思い込み、全部脱いで自由になっちゃえば？』『自分で自分を愛せない人が誰を愛せるの？』最初は軽薄なイメージだった彼が、読み進めるうちにどんどんと魅力的な男性になっていった。2022/02/17
