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内容説明
『風と共に去りぬ』は恋愛小説ではない。分裂と融和、衝突と和解、ボケとツッコミ――高度な文体戦略を駆使して描かれたのは、現代をも照射する壮大な矛盾のかたまり。全編を新たに訳した著者ならではの精緻なテクスト批評に、作者ミッチェルとその一族のたどってきた道のりも重ね合わせ、画期的「読み」を切りひらく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
133
『風と共に去りぬ』は見てから読むのがデフォなので、原作と映画の違いなどまず注意しない。なのでヴィヴィアン・リーや<タラ>の家は原作の描写からは遠く、無知が目立つスカーレットではなく優秀で勘の鋭いメラニーこそが真のヒロインであり、後半では両夫婦ともセックスレスの状態にあったなどと言われては、映画のイメージが正反対になってしまう。しかも大衆文学呼ばわりされたミッチェルの文体は技法に駆使し、技術的に映像化は難しいとわかっていたと作者の手紙を引用して論証するなど、従来の読みを一新する新しい読み方に満ちているのだ。2023/07/19
さつき
72
『風と共に去りぬ』は中学生の時に出会い夢中になって読んだ作品。当時は繰り返し読みました。祖父母世代にとっては敗戦後に観た映画として印象深かったみたいで、よくその話しをしたことを懐かしく思い出します。一方で、あまりに豪華な映画の世界に違和感を抱いていたので、色々な疑問が解き明かされた思いです。メラニーがどこまで気づいていたかは、私も長年の疑問でしたが、アシュリについては、あまり注意を払ったことがなかったなぁと気付かされました。大人になった今読むと、また違った面が見えてきそうです。2019/08/14
夜長月🌙@読書会10周年
54
訳者である鴻巣さんによる解説本です。例えば「性悪なヒロインが嫌われないのはなぜなのか?」「レット・バトラーが唐突にスカーレットを捨てて入隊するのはなぜか?」など。そしてヒロインは「スカーレット・オハラ」だけではないという解説にかなりページを割いています。スカーレットが真にありたいと思っていた姿や心の支えなどから詳しく分析されていました。風共の全5巻を読み終えた方にはとてもおすすめです。2024/05/30
ころこ
38
奇を衒った謎ときではなく真っ当な改題です。何より映画を観て、出来たら新潮版全5巻を読んだ後が本書を十分味わえます。著者は翻訳を単に異なる言語に移す行為ではなく、あるまとまりとして理解して、そのまとまりごと異なる言語で表現する行為だと捉えているようです。作者のジャーナリストという出自に影響を受けた現在のアメリカ社会にも通じる政治問題、激しさをもったスカーレットの原型ともいえる作者の祖母と南部における家系の問題、スカーレットとレットの夫婦関係のリベラルさ、レットとメラニーとの関係など、手堅い解釈をしています。2021/02/24
縄文会議
31
翻訳者だからこそ気づくような文体のことや、歴史的なこと、作者の家族のこと等、本作への知識が補完されて楽しい。パンジーの話面白かった。メラニーが鍵というのはうっすら思ってたけど、バトラーと母との関係には気づいてなくなるほど。「ビッチ型ヒロインはなぜ嫌われないのか」「長い、長いノリツッコミ」なんて見出しも楽しい。私の好きなウィルが「映画に出てこないがおいしい役どころ」とあるの嬉しい。アシュリへの考察も面白い。レットの最後のセリフって有名だったの知らなかったが、確かにかっこいい。面白かったです。2023/07/20