貿易戦争の政治経済学:資本主義を再構築する

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貿易戦争の政治経済学:資本主義を再構築する

  • ISBN:9784560096888

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内容説明

グローバル経済の行く末は、ますます不透明になってきた。ブレグジットやトランプ大統領の誕生で、米国と欧州は傷ついた巨人としてもがき苦しんでいる。低成長に喘ぐとともに、格差の拡大で社会の足場が大きく腐食されているのだ。
本書の著者、ダニ・ロドリックは『グローバリゼーション・パラドクス』でこうした展開を正確に予測していた。本書は、『グローバリゼーション・パラドクス』以後の世界を展望した最新刊である。
本書によると、米英を中心とした自由主義陣営と中国を中心とした重商主義陣営が相互に共存できる時代がここ数年で終焉したという。先進国においても雇用や輸出が重視され、米国が重商主義に改宗しようとしているのは象徴的だ。
成長の核になる途上国の未来も暗い。グローバリゼーションとテクノロジーの進展は、貧困国に十分な産業化の時間を与えず、「早すぎる脱工業化」が世界を蝕んでいるのだ。
ポピュリズムや「怒りの政治」はこうした事態を栄養源として成長してきた。自由主義と重商主義の攻防にどう向き合うのか? 中道左派はいかに国民の信頼を取り戻すべきなのか? 資本主義を再構築するための新たな提言!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ばたやん@かみがた

56
著者は問う。労働権を極端に抑圧している途上国から安い工業製品が自国市場を席巻するのをあなたはどう思うだろうか、と。それは不正義かつ不公平ではなかろうかと言う直感を著者は肯定する。このような社会的ダンピングの解決に国際機関を交えず自国政府に委ねよ、との主張もユニーク。それら機関のエリートが選挙の民主的コントロールに晒されず結果民主主義の機能不全招いたことをEU等を例に示す。/興味深いのは左派を標榜する著者の主張が自らは反発するトランプ政権(大統領の工場流出阻止の自慢を場当たり的と扱き下ろしている。)の(続2019/06/15

Hiroo Shimoda

8
貿易を通し社会的不平等が伝播する。とすれば、サービス残業しまくりの日本が相対的な低コスト品を輸出してくるのは労働環境を大事にする国からすれば不平等な戦争であり、障壁を作るのも当然。2019/09/29

hidek

4
世界は分断と連携を繰り返す。前回は金本位制による国際連携への反発からファシズムや共産主義が台頭した。今回も異教徒や移民、富裕層等を矛先に分断が始まっている。著者はこの責任の一端が経済学者にもあると批判する。多くが国際化の負の側面をあえて伝えず、際限の資本の自由を推し進めた為だ。目指すべきは国内経済を秩序あるものにしつつ、社会を民主的なルールに沿うよう調整していくことであると云う。その他にも学問としての経済学、経済成長における自由化や構造改革の功罪、新興国の発展の鍵なども議論し世界経済情勢を俯瞰できる一冊。2019/09/26

人生ゴルディアス

3
滅茶苦茶面白かった。グローバリゼーション・国家主権・民主主義のトリレンマの指摘だけでもう面白い。自由競争がイノベーションを生み出し、国家運営にたった一つの正解がないのなら、個々の国ごとに様々な制度を試し競争すべきで、画一的な国際制度を求めるグローバルガバナンスは誤りであり、グローバルガバナンスは明らかに各国の政策を縛り上げることになる。極端な例がEUで、崩壊の瀬戸際に立たされている。自由主義は雇用を生み出さず重商主義は雇用を生み出すとか、関税合戦よりかは国内補助金合戦のほうがましとか、目から鱗の指摘が多い2020/01/10

デンプシー

2
スローバリデーションを国際政治経済学的に説いた本書だったが、リベラリズム・革新主義への反駁にも思えた。つまり、各国が歴史的に積み重ねてきたルール(規制・制度)をぶち壊してまっさらにした上に。ワシントン・コンセンサスのような普遍的なルールを据え置いても上手くいくわけがない、もっと穏便に、テーラーメイドな制度にしましょうねという、聞き覚えのある展開が聞こえてくるようだった。また、産業政策・経済政策における国家の意義にも触れていて時代の変化を感じた。ところで「貿易戦争の経済学」はミスリードなタイトルだと思う…。2024/03/28

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