内容説明
空襲で市街の九割が焼けた青森。闇市を仕切る香具師の親分、江藤家の双子の令嬢が、惚れた男のため「魔法使ひ」に近づいた。あまりに危険なその代償とは。がれきの街の混乱の中、たくましく生き抜く人々の、壮絶で妖しい物語。<文庫書下ろし>
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yamatoshiuruhashi
44
敗戦後、空襲で焼けた青森を舞台に香具師の双子の娘の話から始まる7つの短編集。読み進むに連れて主人公たちが変わっていく。敗戦直後らしい命の軽さと混沌の中で起こる不思議な事柄と猟奇的な事件。推理小説のようでもありオカルトのようでもあり、そしてエログロの世界でもありまさに映画や小説で読むあの時代を表している。差別的と言われるかも知れないが、これが女性の手による話だとは思えないほど混乱をよく表しながら、一種幻想的な部分もあり読み応え充分だった。2021/08/15
ぽろん
43
戦後の青森が舞台。パンパンやヤクザな香具師。香具師の娘。非日常な物語が繰り広げられる。極め付けは、担ぎ屋の魔法使ひ。彼は、いったい、何者なんだろう⁈2019/07/11
JKD
21
戦後の混沌とした時代に逞しく生きる香具師の娘たち、アッパッパーを着たパーマ頭のパンパンとか、ステッキガールに洋パン、バラック生活にRAAなど当時の俗物ネタは非常に興味深い。児肝って本当にあったんだろうか?2019/07/11
NAOAMI
18
戦後間もない青森のバラックを根城なする魔法使ひなる者がいる。香具師の双子娘、チンピラ、パンパン┉ホントにろくでもない登場人物らが絡むトラブルに泣きつかれた形の魔法使ひが大枚と引き換えにアッと驚く解決を見せる。ただ解決のからくりには説明が無く、えっ?一体何がどうなってるの?というオチも。それでも何となく読めたのは、当時の暮らしぶりや風俗、青森土着の慣習などに面白味を感じたから。トリックの解き明かしが無いってことは、完全なるあやかしモノとみた方がいいのかな。てふ子の最期も不可解だし、はな子の変様もどう捉える?2020/01/03
ぶうたん
10
戦後すぐの青森を舞台にした作品。時代のせいか、いつもの作品より冥い。幻想的な要素も背景としてはあるものの主眼ではなく、あくまでも時代を描くことに著者の興味は向いているようだ。一般向け作品の力作。2019/07/27