講談社学術文庫<br> 国民主権と天皇制

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講談社学術文庫
国民主権と天皇制

  • 著者名:尾高朝雄【著】
  • 価格 ¥1,210(本体¥1,100)
  • 講談社(2019/06発売)
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  • ISBN:9784065162712

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内容説明

惜しまれながら急逝した不世出の法哲学者・尾高朝雄(1899-1956年)、初の文庫版。本書の原本は、1947(昭和22)年10月に国立書院から出版されました。その5ヵ月前には日本国憲法が施行されています。大日本帝国憲法から日本国憲法への移行は、前者の改正手続きに基づいてなされました。そうして「天皇主権」から「国民主権」への大転換を遂げた新しい戦後日本には「象徴天皇」が残されました。国民主権と天皇制ははたして両立可能なのか? もしそこに矛盾があるのなら、戦前から戦後の移行はいかにして根拠づけられるのか? これらの疑問は、単に憲法学の問題であるだけでなく、戦後の繁栄を支えた日本の新しい形は正当な根拠をもつものか、というすべての日本国民に関わる問題でもあります。本書は、この問題を解きほぐしてくれるものです。改正手続きの具体的な経緯をたどり、その過程で起きた「国体」をめぐる論争に触れつつ、「主権」とは何なのか、という問いを追求します。誰にでも理解できるよう、ていねいにたどられていった考察の末、「国民主権」と「天皇制」を両立させる「ノモス主権」が提示されます。本書が発表されたあと、憲法学者・宮沢俊義(1899-1976年)が異論を唱え、二人のあいだに論争が繰り広げられました。本書は、宮沢の批判に対する応答として書かれた二篇を増補して1954(昭和29)年に青林書院から刊行された版を底本とし、その内容を追えるようにしました。「ノモス主権」の概念は、長らく忘れられてきました。しかし、ここには今こそ考えるべき問いがあります。学術文庫『立憲非立憲』に続き、唯一無二の憲法学者・石川健治氏による渾身の「解説」を収録した本書は、新しい時代の日本にとって必須の一冊となることでしょう。[本書の内容]序 言/はしがき/第一章 新憲法をめぐる国体論議/第二章 主権概念の批判/第三章 国民主権の原理/第四章 天皇統治の伝統/第五章 新憲法における国民主権と天皇制/第六章 ノモスの主権について/第七章 事実としての主権と当為としての主権/解説(石川健治)

目次

序 言
はしがき
第一章 新憲法をめぐる国体論議
第二章 主権概念の批判
第三章 国民主権の原理
第四章 天皇統治の伝統
第五章 新憲法における国民主権と天皇制
第六章 ノモスの主権について
第七章 事実としての主権と当為としての主権
解 説(石川健治)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

てつのすけ

37
日本国憲法制定により、主権者が天皇から国民に変わった。これをもって、国体が変更されたとの解釈に対し、著者は大日本帝国憲法の下においても、天皇が実質的な決定者であったのかと疑問を呈している。 確かに、太平洋戦争の終戦については、御前会議で天皇の聖断により決定されたのかもしれないが、そこに至るまで、すべてが、本当に天皇の意思で決定されていたのかどうか疑問である。 このように考えると、憲法改正の前後を問わず、それが誰なのかは問わず、常に少数の意思決定者によってなされているのではないであろうか?2020/01/18

spanasu

4
尾高朝雄のノモス主権論についての本であり、読みやすいが、石川健治大先生の解説は難しい。尾高は、ルソーによる一般意思と特殊意思総計の区別を受け、国民主権に基づく民主政では避けられない多数決原理を警戒し、政治はノモス主権に服さなければならず、国民のノモスの実現(=平等)の責任への自覚が国民主権では避けられないとする。また伝統的に天皇はノモス主権を体現する存在であったとし、政治的権力を取り除いた先に象徴天皇を見出す。つまり、国民主権も天皇制も、ノモス主権に服さなければならないとして、尾高は両者の調和を図った。2020/01/06

ミスター

4
勉強になった。しかし言われてみれば簡単な話だなと思う。結局戦後の国民主権は天皇によって表象代理されるものであると。大東亜戦争肯定論者の小林よしのりが、この尾高の理屈に基づいて「立憲主義」を標榜するのは宜なるかなと。2019/06/29

Ohe Hiroyuki

3
法哲学者である著者が、『国民主権と天皇制』という小論を発表し、それをきっかけに宮澤俊儀との間で論争が行われたが、その論争を収録した著作集である▼著者は、大日本帝國憲法(天皇主権)も日本国憲法(国民主権)においてもありうべき(当為)として形は変わらないのではないかと述べ、暗に宮澤俊儀の八月革命説を批判したものである。▼本書の議論の背景については、石川健治教授が詳細な解説を行っているので、それを読むのがよい。▼憲法を語るうえでの一つの視座となっていることは間違いないであろう。手に取って一読してよい一冊である2021/08/23

衛府蘭宮

1
おもえらく4章2の議論が卓抜であった。2019/10/14

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