講談社文芸文庫<br> モナリザの微笑 ハクスレー傑作選

個数:1
紙書籍版価格
¥1,760
  • 電子書籍
  • Reader

講談社文芸文庫
モナリザの微笑 ハクスレー傑作選

  • ISBN:9784065162804

ファイル: /

内容説明

機械文明の発達により便利になった世界がかえって人間性の喪失につながるという、まさに21世紀の世界が直面する問題を描いたディストピア小説『すばらしい新世界』のハクスレーによる、傑作短篇集。モームやヘンリー・ジェイムスの名訳者として知られる行方昭夫氏が、作風の異なる5つの短篇を精選し、訳し下ろしました。科学、数学から美術、音楽、哲学にいたるまで、博学で知られるハクスレーの面目躍如たる作品集です。収録作:「モナリザの微笑」「天才児」「小さなメキシコ帽」「半休日」「チョードロン」

目次

モナリザの微笑
天才児
小さなメキシコ帽
半休日
チョードロン

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

NAO

81
博覧強記の奇才オルダス・ハクスレーの本領発揮の短編5つ。『モナリザの微笑』はミステリのようだが、才能があるにもかかわらず無為に過ごす有閑知識人など生きるに値しないとでもいうようなラストにハクスレーらしさを感じる。「アリとキリギリス」の逆パターンのような『小さなメキシコ帽』や『半休日』は、主人公の思いとまったく逆に話が進むという何とも皮肉な話。ハクスレーはあらゆることに秀でているごく少数の天才で世界は変えられていくと考えていたというが、そういった天才が悲劇的な目に遭う『天才児』は、天才への愛が溢れている。2019/07/27

藤月はな(灯れ松明の火)

70
表題作は再読だが、ハットン、腹立つわ・・・。だからこそ、自分は高潔だと嘯きながら俗物満々で女性への敬意がない男が陥る落とし穴に意地悪くもニヤリとしてしまう。「天才児」は万有の才能を持った少年の悲劇。しかも才能の否定ではなく、才能を認められてからが悲劇だったというのは現実性がある。しかし、現実味がありながらもその苦味が強すぎずに甘やかな哀愁へと変わるのはそんな天才児への温かい視点が作者の筆から溢れているからだ。「半休日」は夢見ていた事と現実のギャップのあるあるに苦笑。2019/08/13

みつ

24
およそ半世紀ぶりのハクスレーの短篇体験。所収作品も含めきれいさっぱり忘れているため、その意味では新鮮。へたをすれば鼻につきそうな博学ぶりが小説の流れに自然に溶け込み、独自の存在感を示している印象。『モナリザの微笑』は、暇を持て余す男の度し難い行状を描きながら、結末はリドル・ストーリーのようにも読める。『天才児』は数学の証明まで盛り込まれた風変わりな作品。少年の運命に対する悲しみが、皮肉屋の作者らしからぬ共感を呼ぶ。一番面白かったのは『半休日』。冴えない男の二人の女性に対する妄想を描いて微苦笑を禁じ得ない。2023/07/03

ふみふみ

7
表題作は一人称が「おれ」の上流階級知識人。サイコパスっぽいキャラがなんだか筒井康隆の短編を読んでるような気分にさせます。「天才児」は含蓄に富んだ悲しい話。ハクスリーらしい博識とシニカルさが入り混じった短編集でした。2021/01/09

Susumu Kobayashi

7
表題作はミステリ傑作短篇集などに収録されることのある有名作。今回は再読だがすっかり内容を忘れていた。「天才児」は希有な才能を持った少年が理解のない大人に押しつぶされる話。「小さなメキシコ帽」はイタリアでメキシコ帽をかぶっていたことから画家と間違えられたことから、不思議な老伯爵と知り合いになる。「半休日」は冴えない男がロマンスを夢見て現実とのギャップに翻弄される話。未訳だった「チョードロン」は亡くなった実業家チョードロンについて、その自伝の代作者ティルニーがチョードロンの本当の姿を語る話。2019/09/30

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/13899802
  • ご注意事項