内容説明
逸脱にはさまざまな形が存在する。規範があるから逸脱があり、規範がなければ逸脱も存在しない。逆に逸脱の多様性は、社会を規定する明示的、あるいは暗黙の規範を浮き彫りにする。近代フランスの社会は、男女の身体、情動、欲望をめぐってどのような規範を課し、逸脱はどのように表象されたのか? 小説、自伝、日記、医学書、性科学の啓蒙書などの言説をつうじて読み解いていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
9
性愛について規範を逸脱した男女はどう語られてきたか(文学的に、医学的に)。第一部が女(未婚の娘、感応遺伝、フェミニスト)、第二部が男(ジャン・ボリの「独身者」、あとはSMとフェティシズム)。普仏戦争敗戦後、力強い国民を産み増やすべきとされ、結婚に背を向ける独身男は糾弾。一方の独身女はこれまで通り、老嬢(まだ20代でも!)として滑稽な存在、それに反抗する女性たちも現れるが。第一部一章「若い娘たちの表象」がこれまでの研究とのつながりからも、最も濃密。ディアーナ型(処女、夢の女(コルバン)とヴィーナス型(娼婦)2021/04/08
nranjen
7
今まで三冊読んだこの著者の本で一番面白く感じた。主題もそもそも面白いのだけど、「変質」的なものの表象が社会の中で、文化の中で徐々に立ち上がってくるものが見事に説明されており、表象を述べること自体の面白さが感じられた。19世紀フランスにこうした逸脱が規定されたのは、国家という幻想が強烈な力で具現化してきた時代だからなのですね。ラシルドやヴィクトール・マルグリット、ポール・ブジェが扱われていて嬉しい。2020/04/01
らむだ
2
十九世紀フランスで、逸脱した人間についてどのように考えられ論じられたかをまとめた一冊。 独身者や性的倒錯が“変質”という概念と繋がり、社会や国家の脅威と捉えられていた。2022/01/22
takao
0
ふむ2025/10/13
トム
0
軽いノリで読めた。だが、ところどころ筆者自身の内面化した価値観が垣間見えて、きつい。p.152「恋人」とあえて括弧付きで表記するのはホモフォビアではないか。また同ページに「ホモセクシュアルという語は差別的、侮蔑的なニュアンスを孕むため現代は忌避されている(そして代わってゲイ、レズビアンという語が用いられる)」という旨のことが書かれているが、これは事実誤認では?略称の「ホモ」は明らかに差別的ニュアンスを含むが、ホモセクシュアルという語自体にはそのようなニュアンスはないし、同じホモセクシュアル(同性愛者)→2021/08/04
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