内容説明
摂食障害気味の女性作家「私」のパソコンに日々残されている意味不明の文章=錯文。錯乱した状態の「私」が書き残しているらしいのだが…。関係を持った編集者の「彼」とその婚約者の「彼女」をめぐって、「私」の現実は分裂し歪んでいく。錯文の意味するものとは。錯乱した「私」は正気の「私」に何を伝えたいのか。孤独と分裂の果てには何が待つのか。著者の大きな飛躍点となった第三長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
435
「私」が語る一人称饒舌体小説。夜な夜な錯文が私の脳内に増殖し蔓延ってゆく。まるで"Amebic"(アメーバ)のように。薬による作用か(多少はそれもあるだろう)それとも私の精神の自己崩壊か、それはわからないが、次第に昼間にも現れるようになる。タクシーの中で彼の婚約者になりきる妄想は、もはや本来の私なのか、それとも妄念のなせる業なのかも判然としない。あるいはある種の共生、共犯関係にあるのかも知れない。全体を通して、文体はきわめてウエットである。湿潤気候の中での軟体動物のように。2022/01/30
さてさて
136
『私は食事を摂らない主義なので』。衝撃的な言葉を『当然のこと』と言ってのける主人公が、自身が書いたはずの『錯文』を見つめ、思いを巡らせる様が描かれるこの作品。そこには摂食障害と生きる一人の女性のある意味で力強い生き様が描かれていました。改行なく数ページに及ぶ『らりった』文章の頻出に怖いもの見たさの感覚が刺激されるこの作品。勢いのある文章が巻き起こす感情の起伏の繰り返しに自身も『錯乱』しそうにもなるこの作品。心が壊れていくとはどういうことなのか、そんな瞬間を体験させてくれもする強烈な印象が残った作品でした。2023/04/10
ゴンゾウ@新潮部
116
摂食障害の女性作家の主人公。「正気な私」の中にいる別の「錯乱した私」。錯乱した私が書き綴る錯文。金原ひとみさんの作品は 好きなのだがこの作品は難解。2018/08/19
ゆいまある
110
婚約者のいる男と付き合ってる摂食障害の作家。ガリッガリなのに酒とサプリしか口にしない。ある日書いた覚えのない不思議な文章に気づく。酒と睡眠薬一緒に飲んで記憶無くす奴ですね。私も若い頃やりましたよ。だが作家はその滅列な文章をもう一人の自分からのメッセージではないかと考える。挙句、恋人の婚約者に成りすまし、彼と結婚する空想に陶酔する。はい、大分おかしいですよ。主治医に相談してくださいね。人が怖くて、恋人に近づきたいのに嫌われるのが怖くて、進んでいく解離と拒食。セルフネグレクト。作者20代の作品か。恐ろしい子。2022/02/16
ころこ
43
一人称で自分を見つめるとなると、二分法でいうと普通は精神に向かうだろうが、作者の感性では身体の中に向かう。結果的に作者の作家としての武器になったのではないだろうか。男性作家の場合は、精神的な露出と韜晦から言葉を連ねる。それはもう歴史的に書かれたことだ。女性作家の場合は身体に向かう。そして彼女の場合は、身体の内側に向かっている。AMEBICとは、そういったぐちゃぐちゃした吐瀉物や排泄物、身体内部の内臓、性器の隠喩のことだろう。どこまでも精神的な考察に向かわない、他方で身近な男性の描写にも向かわない。2022/12/05
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