内容説明
近代化の坂を駆け上がった日本。その表舞台にはいつもこの男がいた――穏やかな気候で知られる、静岡県・興津にたたずむ「坐漁荘」。この地で晩年を過ごし、最期の日を迎えた西園寺公望は、日本が西欧列強に肩を並べようと全速力で駆け抜けた明治という時代に、パリ講和会議の全権大使、内閣総理大臣など政府の要職を歴任。国の中枢で活躍した大政治家としてその名が知られる。民を思い、国を憂えた「最後の元老」は、いかにしてその生涯を閉じたのか。「坐漁荘」での西園寺を支えた女中頭、漆葉綾子との交流を軸に、知られざる素顔に迫る。
感想・レビュー
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みさと
1
西園寺公望が臨終の際に自らの人生を振り返った、という小説。フランス留学時代に出会った親友クレマンソーと語り合った国際協調と世界平和。その夢を実現させるために、共に日仏の全権代表として臨んだパリ講和会議であったが、帝国主義のはびこる現実に理想は破れていく。国内にあっても、国際協調を主張し続ける西園寺に対しては、軍国主義の高まりとともに暗殺の危険が。静岡県興津に構えた質素な別荘に住み、地元の人たちから町の殿様と慕われた晩年。その人柄が偲ばれる好小説、幕末生まれの西園寺が現代語で話をする不自然さを除いては。 2019/07/12