内容説明
昭和20年3月10日未明の東京大空襲は、下町一帯をたちまち火の海と化した――国民学校6年生の杉夫は、母と仲よしの町子とともに、なんとかして生きのびようと、襲いかかる猛火とたたかい、逃げ道を探した。死を切りはなすことのできない「ほんとうの戦争」のおそろしさを鮮烈に描き、平和の尊さを訴えた不朽の名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
26
1945年3月10日は東京大空襲の日。物語の大部分は、前夜から明け方の描写に注がれている。非戦闘員である一般の市民の命が、どれほど軽くあしらわれ、失われていったかを、その時代、その日を知る者だけが書きうるディテールで積み重ねていく。戦争の残酷さはもちろん、権勢を持つ者が、いかに理不尽にふるまうかも改めて思い知らせてくれる。1964年の発表当時、すでに戦争が「かっこいい」ものとして、子どもの間で扱われていた、ということだが、命こそ最も大切なものであることだけは、いつまでも忘れずに共有されていってほしい。2015/08/28
ぴく
5
1945年3月10日、10万人もの人々が命を落とした東京大空襲。攻撃を受けている時の必死さや直後の無力感。将校や憲兵に対する理不尽な暴力や権力への不満。緊迫した場面ばかりではなく、6年生の主人公が子どもらしく冗談を言って笑い合う様子。でもそれが逆に現実味を帯びて生々しい。「戦争が、とちゅうでやめられたものなら......」「もっとはやく、こんなになる前に、やめてもらいたかったよ」そう感じた人がどれほど多かったことか。自身も13歳で東京大空襲を経験した著者は今年5月、老衰のため90歳で亡くなったそう。残念。2022/08/12
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