内容説明
武士の世の到来を告げ、貴族の支配を終わらせた平安末期の「保元・平治の乱」。長承三(1134)年。父を亡くした11歳の藤原忠雅は、白い花を携えて末茂流への婿入りの日を迎えていた。手に持つのは、明け方から夕方にかけて色を少しずつ変化させる「酔芙蓉」。その邸で完璧なまでに整った容貌を持つ美少年・藤原隆季と出会う。低い家柄である隆季は、やがてその美貌ゆえに権力者たちの我欲に翻弄されていく。だが龍のごとき男・平清盛と盟を結び、隆季は家のため、出世の階段を登り始める。守るべきは心か、家か――――政争を繰り返す貴族たちから一族を守るため、青年は美しき冷たい仮面を被った――高貴な家柄を持つ男と、類い稀なる美貌を持つ男の運命は。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケロリーヌ@ベルばら同盟
56
開ききった花のような、熟れ過ぎた果実のような、爛熟の平安末期、繁茂し縺れる藤の末枝に、絶世の美華が咲いた。朝方に純白の花弁を開き、時と共に紅色を増す酔芙蓉の花と称えられる、若き公達藤原隆季。権門には遠く、除目の度に汲々とする中流貴族の家柄。家名を保ち、一族の弥栄を悲願とする父、家成は、美貌の息子を治天の君に差し出す。権力者に諂い屈辱を堪える負の連鎖を断ち切るには、自らが高みに昇らねばならぬ…。無垢な面影を抱く心を氷の面で覆い、蘭陵王と化した隆季は、乱世に散り敷く藤の枝葉を踏みしだき、強かに世を渡ってゆく。2021/04/26
真理そら
51
『春の夜の夢のごとく新平家公達草紙』でこの作者を好きになった身には深く満足できる読書だった。蘭陵王のように美しい中流貴族藤原隆季を中心とした物語だが、小督との関わりで息子の隆房の方が私にはなじみ深い。息子が自分のような思いをしなくてもいいようにと耐える隆季と初恋を忘れられない隆季の描き方のバランスが良くて読み応えがあった。酔芙蓉が情を象徴するような形で登場するので、一言で男色と言い切れないほど様々な形があるのだなあとBL本とは違う感慨を持ちながら読み終えた。でもウィキで調べたら隆季には13人も子供がいる!2019/09/17
みえ
41
時代小説は好きだけど、男と男の恋みたいな話になるのは苦手。2019/10/04
みいやん
10
藤原隆季の生きざまと酔芙蓉の美しさ。なかなか読みごたえがあるが、やたらと男色がねぇ… この時代には同然のことだったのだろうけど。2019/08/26
ハルト
8
読了:◎ 平安末期の平家が台頭してこようかという時分。類い稀なる美貌を持つがゆえに、流転する運命に身を置いた藤原隆季(たかすえ)の一生を描いた平安男色絵図。花山院忠雅や藤原頼長、鳥羽院に後白河法皇らと政治の一環としてその波に身をまかせながらも、ただひとり愛した姫のことは忘れずにいるという、潔癖なまでの一途さ。そこに悲恋に終わったふたりの想いのはかない美しさがあると思う。けれど男色のめくるめく関係にはびっくりした。2019/08/05
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