内容説明
アメリカ社会、とりわけ若い世代に広がりつつあるリバタリアニズム(自由至上主義)。公権力を極限まで排除し、自由の極大化をめざす立場だ。リベラルのように人工妊娠中絶、同性婚に賛成し、死刑や軍備増強に反対するが、保守のように社会保障費の増額や銃規制に反対するなど、従来の左右対立の枠組みではとらえきれない。著者はトランプ政権誕生後のアメリカ各地を訪れ、実情を報告。未来を支配する思想がここにある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
114
かなり勉強になった! この本はアメリカで少しずつ浸透しているリバタリアニズムについてかかれたものである。この本を読むまではリバタリアニズムのことをなにも知らなかった。だが、読んでみると納得できる部分と疑問をもつ部分があった。リバタリアニズムは小さな政府 市場重視 個人の自由を重視する考え方である。いまの日本でこれをやると市場万能主義や老人や社会的弱者を差別していると言われる。だが、こうした考え方も踏まえていまの世の中を考えることがダイバーシティではないかと考えたのである。またこうした本を読みたい!2019/08/18
Willie the Wildcat
70
自由市場/最小国家/社会的寛容を礎とする自由主義。著者の表現「自然淘汰」が、思想の理想と矛盾両面を描写している感。加えて、自由と権利に伴う義務と責任の定義と解釈の問題。シーステッドや、GAサンディスプリング市に垣間見る”独立”。美辞麗句の理想はさておき、イデオロギーである以上少なからず既存の右派左派同様に、集合的属性の利害、排他性は否定できない。著者が提言するように、「考え方の1つ」と捉えるべき。なお、資産家の影響の限界を再確認できたのも興味深い。2019/08/24
skunk_c
68
リバタリアンとその考え方をアメリカ社会の研究者が、豊富な人的交流を踏まえながら解き明かす。著者は政治・経済の両者に対する自由(ただし私有財産制を前提とするのがアナキズムと異なる)を目指すリバタリアニズムを全面的に受け入れているわけではないので、批判的な視点も混じるが、何よりその多様性を知ることができたのが収穫。元来はアメリカの建国精神に由来するよう。ただ、著者も一部認めるように、この思想は「持てる者(財産に限らず才能など)の性善説」ではないか。慈善事業で弱者救済では、こぼれ落ちる者が生まれると思うのだが。2020/03/16
佐島楓
64
思想が細分化されていくのは自然の流れ。しかし、不寛容な傾向が強い日本ではこの考え方(スタンス)は定着しにくいだろう。2019/02/17
Sam
57
最近はリベラルと保守ではなくリベラルと権威主義が対置されて論じられていることが多いように思うが、それらに比べるとどうしてもキワモノ扱いされがちで個人的にも肌感覚での理解が及ばないのがリバタニアニズム。本書は少々古いが著者の鋭い指摘も含めて実に網羅的で目の行き届いた解説がされている良書だと思う。「「保守」と「リベラル」、あるいは「右派」と「左派」といった従来の二項対立に囚われない解」を模索するリバタニアンの理念や歴史、具体的な政治活動、市民や学生による草の根運動の様子がよく理解できた。2022/11/07