内容説明
僕は少年時代、何度も死の誘惑が待ち伏せていた。今度は42歳で脳溢血だ。奇跡の生還をして2年、ベンチに座っていると、記憶の底から怪しく、おかしく、懐かしい人々がやってくる。稲荷大明神が降りた荒木のおばさん、キブツで出会った女、フランスの小さな城の田園生活……普通の生活へのいとおしさ、懐かしさを謳い上げ、病んで知る人生の機微を鮮やかに描いた15の名篇。高校国語の教科書にも収録された「丘を越えて」を含む。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
69
読友さんの感想に惹かれて。短編集でどの話もふとした切っ掛けから過去を思い出すという『失われた時を求めて』のような形式をとっているのだが、それがどれもささやかで人生の片隅のような話ばかり。それでいて読んでいると、どうしようもなく惹き付けられる。人間のどうしようもない悲しみと愛しさが短い話の中に詰まっているからかな。大阪の霊能者の小母さんや明日からムショに入るヤクザの話を横で聞いてる話はインパクトがあるが、昔出会った西洋のホテル夫妻や目立たない男みたいな穏やかな話にも心惹かれるなあ。落ち着いた一冊でした。2023/06/17
ROOM 237
17
タイトルに惹かれてKindleアンリミ。著者は脳溢血歴2年にしておもしれぇじゃねぇか精神でやっていくことを決意、本書は偶然にも先日読んだ「どぼらや人生」に近いものがある面白いエッセイ集。表題作の荒木のおばさんはタイトルにするだけの価値があって、京都荒木神社の稲荷大明神がおばさんに降りたらしいw。前後の話が民俗学好きにはズキュンとくる話だなあ。あとは、笑ってはいけない明日ムショ行きのヤクザと居合わせた@居酒屋も最高。目の付け所が凡人ではない、辛い時にクラスで一番地味な奴を思い出して紛らわせるとか面白い。2023/05/25
しまやま
1
スーパー銭湯のサウナに入ってテレビを見ていると、(丁度犯人が崖っぷちあたりに追いつめられている場面)突然勝手にチャンネルが変わることがある。遠隔操作かな、と思いつつ何の前ぶれもなく始まった番組を、ほど良く湯で上がった脳みそで違和感なく見つめる。 馬鹿みたいな例えでスミマセン・・・・。 2012/04/17