内容説明
高齢化社会の将来を占う渾身ルポルタージュ。
一年中温暖、物価は日本の3~5分の1、やさしく明るい国民性、原発ゼロ、年の差婚当たり前。日本で寂しく貧しく苦しい老後を過ごすなら、いっそのことフィリピンで幸せな老後を送りたいと、日本脱出の道を選んだ高齢者たちは少なくない。はたして、老後の楽園はフィリピンにあるのだろうか。
果たして、現実は……。
恋人候補200人のナンパおじさん、19歳の妻と1歳の息子と、スラムで芋の葉を食べて暮らす元大手企業サラリーマン、東日本大震災を機に、東北から原発ゼロのフィリピンに移住した夫婦。ゴミ屋敷暮らしだった母親をセブ島に住まわせる娘、24歳年下妻とゴルフ三昧の元警察官。90歳の認知症の母親をフィリピン人メイドと介護する夫婦、「美しい島」で孤独死を選んだ元高校英語女性教師……。さまざまな「脱出老人」のジェットコースター人生を、開高健ノンフィクション賞受賞作家が、フィリピン&日本で3年間にわたり徹底取材した衝撃のノンフィクション。
「老後の幸せ」「人間の幸福感」とは何かを浮き彫りにする、話題作。
解説は、映画監督の崔洋一。
※この作品は過去に単行本として配信されていた『脱出老人』の文庫版となります。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Akihiro Nishio
27
フィリピン出張中にフィリピン本を読む。前作「困窮邦人」ではフィリピンで困窮に喘ぐ人ばかり取材していたが、今回は幸せになった人、上手く適応できなかった人、その人らが日本でどんな生活をしていて、日本に残ったらどうなっていたのかを取材することで、バランスを取り、老後の幸せそのものを論じるスケールの大きなルポとなった。最後に取り上げられる孤独死した無名の女性の過去を暴き立てるのはやり過ぎと思ったが。自分の場合、老後フィリピンで過ごすのは全然ありだな。2019/12/07
0607xxx
14
借金が原因でフィリピンに移住した日本人を取り扱った回を「ザ・ノンフィクション」で観て、興味をもって読んだが、移住が必ずしも間違いでもないように感じた。価値観は人それぞれだが、メリット・デメリットの見極めが重要。2019/07/26
MICKE
8
脱出できるほどのね、お金があればいいんだけどw2019/08/10
有坂汀
7
本書はフィリピンはマニラを拠点に在住、取材執筆活動を行い、著書『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」 (集英社文庫)』(集英社)を上梓し、それが開高健ノンフィクション賞受賞した水谷竹秀氏が、フィリピンと日本の間を往復しながら3年間にわたり徹底取材した日本を脱出し、フィリピンへと移り住んだ高齢者達の「悲喜こもごも」を描いたルポルタージュです。今のところ僕はフィリピンへの移住は全く考えておりませんが、彼らのような人たちもいる(あるいはいた)ことを、しっかりと記憶にとどめておこうと思っております。2025/04/19
bfish
5
フィリピンに移住する人々を通して高齢者の幸福論を考えるノンフィクションとのこと。介護、孤独死、家族との関係など興味深いテーマに切り込んでいき引き込まれました。いろいろ考えさせられるが、そもそもこの人々は海外に移住するという段階で各自複雑な事情を抱えているだよね。結局幸福は個人の受け取り方ひとつで場所ではないんじゃないでしょうか。2022/12/23