講談社選書メチエ<br> 電鉄は聖地をめざす 都市と鉄道の日本近代史

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講談社選書メチエ
電鉄は聖地をめざす 都市と鉄道の日本近代史

  • 著者名:鈴木勇一郎【著】
  • 価格 ¥1,760(本体¥1,600)
  • 講談社(2019/05発売)
  • ポイント 16pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065157121

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内容説明

小林一三神話を覆す! 私鉄黎明期の語られざる歴史「阪急や阪神、東急や西武といった”電鉄”が、衛生的で健全な”田園都市”を郊外につくりあげた」――よく知られたこの私鉄をめぐる物語の深層には、「寺社仏閣」を舞台とする語られざる歴史があった。初期の電鉄をめぐる世界では、神社仏閣とそれを取り巻く人々の、ある意味無軌道とも言える行動が郊外空間を作り出していったのである。それは、近代的な都市計画といった無機質なものでも、経済的な功利性のみだけでも説明のつくものではなかった。とくに、われわれが通常イメージするような鉄道が確立してくる以前の黎明期には、現在の視点からみると「怪しい」人々が蠢いていたのである。そうした人々を突き動かしていたのは、寺院や神社を興隆させたいという熱情であった。「わが門前に鉄道を」……そのすさまじいまでのパワーが、電鉄を、ひいては日本の都市を作り出していったのである。本書は、「電鉄」と社寺を取り巻く「怪しい人々」に光を当てることで、都市と鉄道という近代化の物語の陰に隠された歴史を明らかにしようというものである。近代の荒波を生き抜く希望を鉄道に見いだした寺社と、そこに成功栄達の機を嗅ぎつける怪しくも逞しき人々が織りなす、情熱と欲望、野望と蹉跌のドラマ。鉄道誘致と都市開発をめぐる、ダイナミックで滑稽で、そして儚い、無二の日本近代都市形成史。【本書の内容】序章 「電鉄」はいかにして生まれたか第一章 凄腕住職たちの群像――新勝寺と成田の鉄道第二章 寺門興隆と名所開発――川崎大師平間寺と京浜電鉄第三章 「桁外れの奇漢」がつくった東京――穴守稲荷神社と京浜電鉄第四章 金儲けは電車に限る――池上本門寺と池上電気鉄道第五章 葬式電車出発進行――寺院墓地問題と電鉄終章 日本近代大都市と電鉄のゆくえ

目次

序章 「電鉄」はいかにして生まれたか
第一章 凄腕住職たちの群像――新勝寺と成田の鉄道
第二章 寺門興隆と名所開発――川崎大師平間寺と京浜電鉄
第三章 「桁外れの奇漢」がつくった東京――穴守稲荷神社と京浜電鉄
第四章 金儲けは電車に限る――池上本門寺と池上電気鉄道
第五章 葬式電車出発進行――寺院墓地問題と電鉄
終章 日本近代大都市と電鉄のゆくえ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Roko

28
初期の鉄道敷設計画は、成田山(成田電鉄)、川崎大師(京浜電鉄)、穴守稲荷神社(京急電鉄)、池上本門寺(池上電気鉄道)など、いずれもお寺や神社へ電車で行けるようにすれば、参詣者が増えるという目論見から生まれたのです。つまり、寺や神社側の依頼によって作られたものなのです。 それ以外にも様々な人が電車を使うことで新しいビジネスを起こそうと考えたのです。競馬場や遊興施設、温泉、三業地、そして墓地まで。2022/10/12

onasu

22
大都市から郊外へ延びる私鉄とは、沿線住民の通勤、通学の足であってとは、現状ではその存在の第一義だが、それらの敷設された経緯を掘り起こしていくと、思わぬ歴史が埋もれていた。  まずもって、都市の人口が増えて郊外が必要になったのは大正の半ば過ぎだが、各線の敷設計画は明治の終わり頃から始まるのだから、当初の目的はそうじゃなかった。  答えとしては、表題と共に成田山新勝寺や川崎大師と挙げていけば明白で、そこには銭勘定に長けた坊主や歴史に埋もれた怪物も…。  寺の記述の多いのには辟易したが、興味深い一冊でした。2019/06/20

seki

11
首都圏の大手私鉄の成り立ちが主に書かれた本。京急、京浜といった名だたる私鉄が、明治、大正期に、参詣客の増を狙う寺社仏閣のやり手の僧侶たちと結びつき、参詣鉄道として出発したというのがメインの話。阪急のように、私鉄は住宅地や遊興施設の開発をセットにした経営モデルというイメージを払拭しようというのが筆者の意図らしい。国鉄・JRと私鉄の役割の違いがいまいち分からなかった自分には、目からウロコの内容が盛りだくさんだった。ほかに葬式列車の話も。当時の都市計画の問題も垣間見れて、とても面白い一冊だった。2019/09/15

hitotak

10
戦前の私鉄敷設には寺社仏閣の参拝客を運ぶという目的があったというのは新しい視点で、面白く読んだ。江戸期に人気だった寺院も廃仏毀釈の影響で財政が苦しくなる所も出てきたが、川崎大師、成田山新勝寺に大勢の参拝客が訪れ、門前町も潤うようになったのは仕掛け人の凄腕住職がいたからだとか。ビジネス才覚の有無と地の利が命運を分けたのだろう。初詣という行事が始まったのも明治20年位からで、現在も関東圏で1、2を争う参拝客がこの2寺院に集まるのも両寺の努力の結果と言えるのではないか、と述べられている。2019/09/08

アメヲトコ

10
田園郊外の住宅地開発という小林一三モデルで語られがちな近代の私鉄史に異議を唱え、その前段階にあった社寺参詣との関係にスポットを当てた一冊。成田山や川崎大師、穴守稲荷に池上本門寺といった事例はまあそうだろうなと思いつつ読んだのですが、面白かったのは最後の葬式電車の章。とくに北大阪電鉄(現阪急千里線)の初期構想と墓地開発の関係などはなるほどと目を啓かれました。2019/05/31

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