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内容説明
後藤新平を祖父に、鶴見祐輔を父に生まれた鶴見俊輔。不良化の末、渡米してハーヴァードに入学。日米交換船で帰国して敗戦を迎える。その後の50年にわたる「思想の科学」の発行、「ベ平連」の活動、「もうろく」を生きる方法まで。あらゆる文献を繙き、著者自身の体験にも照らしつつ、稀代の哲学者の歩みと思想に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
75
戦後日本を代表する哲学者・鶴見俊輔(1922-2015)の評伝。政治家の家に育った幼少期、ハーヴァード大学で学ぶ青年期、太平洋戦争開戦とともに交換船で帰国して従軍、戦後は月刊誌『思想の科学』を創刊し、以降50年間にわたって「反動の思想」という哲学的立場をとって言論活動に入る鶴見俊輔の軌跡。読み物としての面白さには少し欠けるが、こういう日本人がいたことを忘れてはいない。2019/05/22
もりくに
70
知の巨人・鶴見俊輔さんが、亡くなってから十年が経った。彼は哲学者であり、また60年安保時の「声なき声の会」、そして70年安保時の「べ平連」の市民運動家、なによりも50年続けた「思想の科学」の編集者と、多くの顔を持った正に「巨人」であった。この伝記は、彼の近くに幼少時から居た黒川創さんが、執筆した。著者に執筆を促したのは、鶴見さんを身近に知る人々の死。(鶴見さんの柩を担ぐつもりであった人々)伝記作者としての恐れは、誤った事実関係の記述。著者は関係者の証言でなく、歴史学で言う「一次資料」と、史料批判で記述。→2022/04/19
とくけんちょ
56
名前は知っていたが、何をなした人なのかよく知らずにこの本を手にした。読み終わり、作者の目論見にカチッとはまった読者だと分かった。人生の擬似体験。さぁ、戦後の混乱した時代、エネルギッシュに生きなければ埋没した時代、誰もが明るい未来を夢見た時代。賛否はあっても、自分の信じる正義を貫く。憧れを感じます。2020/01/15
おさむ
43
Wikiで調べると、哲学者、思想家と書いてある鶴見俊輔さん。この伝記を読むと、そんな範疇には止まらないスケールの大きな人だったことがわかる。思想の科学やベトナムに平和を!連合などの活動しか知らなかったので、驚きでした。とりわけ後藤新平を祖父に持つピカピカのエリート一家に生まれ育ち、10代で渡米してハーバード大学を卒業したという青春期の話は、ほんまかいなと思うほど。従軍をはじめ戦争が彼の人格形成に大きな影響を与えたんだなと実感。大佛次郎賞受賞作。2020/02/07
踊る猫
37
実に豊満・芳醇な伝記だ。決して短くはなく、またひと口でまとめられるほど順風満帆・単純明快でもなかった鶴見の人生をその枝葉末節も含めてここまで盛り込み、人間らしい鶴見の実像に迫ることができたことに唸らされる。それはもちろん黒川創の能力・知性もさることながら彼が鶴見俊輔の近傍にいて彼を観察(というとイヤな響きが増すが)できたことも大きかったのではないか。対象と適切にバウンダリーを引き、そこから愛情を以て相手を見つめ記録・描写に励む。黒川創は自身の小説も記しているが作家気質がここにきて美点として現れていると思う2024/10/06