内容説明
倫理学こそ哲学の中枢に位置する学問である──。本書の冒頭で、著者はこう強調する。人間のあらゆる行動や思索、生き方を根本的に規定するのは倫理であり、したがって倫理学とはまさに「人間とはなにか」を問う学問にほかならない、と。では、この問いに思想家たちはどう向き合い、どんな答えを導き出してきたか。それを明らかにすべく、アリストテレス、エピクロス、ストア派から功利主義、カント、ヘーゲルらを経て20世紀にいたるその歩みを三つの潮流に大別し、それぞれの思想を簡明に解説してゆく。人間の根本原理としての倫理をときあかす円熟の講義。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
YO)))
25
悪しき相対主義や自己責任論が蔓延しすぎではと思うことが屡々ある今日この頃、「「善いこと」とは何なのか」を多少は考えた方がいいよねみたいな気持ちになっており、そういうのを考える端緒として手に取りました。入門書として見取り図が大変分かり良くまとめられていると思います。近代において「理性」の意味するところが、「計算能力」のような即物的?なものにシュリンクしてしまっているとの指摘は、確かにそのとおりだし由々しき問題だなと。2019/03/03
さえきかずひこ
16
本書は倫理学、つまり真の人間らしさとは何かと考究する学問の観点から、コンパクトな西洋哲学史入門としても読めるところが利点である。それくらい、倫理あるいは道徳の問題は、哲学のうちで根源的かつ重要なものとされてきたことが読んでいるうちにしみじみと伝わってくるからだ。著者の主たる専門はカントなので、最後は彼の話で締めくくられているが、和辻哲郎の倫理学について一章を割いて概説し、わが国にも個性的な倫理学があることを示唆していて印象的。文体は明晰できわめて読みやすいので、初めて倫理学に触れてみたいあなたに薦めたい。2019/07/08
evifrei
7
人間とは何かという問いについて必須の問題である『人間らしさ』についての横断的な理解が示される。我と汝という対偶関係で人間らしさを検討する立場として有名なものはブーバーであろうが、本書ではプロテスタント神学者のバルトの説(人間を『出会いにおける存在』とし、『人間はまさにこの人間の自由に基礎づけられた、自由のなかで必然的な、人間と人間との相互共存の実現』とする)なども紹介されており、情報量としては密。また、道徳・倫理という言葉が嫌いな人も何らかの価値決定にはこれらを伴っているという指摘も首肯できる。2019/10/28
袖崎いたる
4
あまり面白くなかった。ベルクソンの倫理学について読めたのはよかった。社会道徳と人類道徳。これは実定法と自然法の違いでいいのかね。本編はまぁ、教科書然な感じで、そこまでノレず。楽しめたのはまえがき、その冒頭にあった、倫理とはそもそもどういう言葉やねん、って話。ラテン語やギリシア語から英語としてよく知られるethicsに通じているという話から、それが日本語になるときの変遷、これがおもろかった! というのもethicsは日本語になるときに「名教学」という訳され方をされたことがあるんだとか。ん、名利を教える学?笑2024/09/06
燐寸法師(Twitter @matchmonk)
3
感想はツイッターで都度投稿したので省略。人間らしさは個々の人間に共通する何かしらの特質で無く、他者との「我-汝」の出会いにおいて生まれるもの。人間は人と人の間に在るものとしてはじめて人間だ、と後半部で主張される。こうした人間理解はユダヤキリスト教の伝統に負うところが少なくない。(ブーバーやマルセル、バルトも登場した)著者の考察に沿って(稀に自分で脱線して)倫理学と神学を往還するのは実に楽しかった。 2022/08/24
-
- 電子書籍
- きみが誰でも愛してる 分冊版(16)
-
- 電子書籍
- 噂のお相手〈ハリウッド・光と影Ⅱ〉【分…
-
- 電子書籍
- 組長娘と世話係 第86話【単話版】 コ…
-
- 電子書籍
- ぜんぶ酒の精14 comic Lime
-
- CD
- シーウィンド/海鳥




