内容説明
私の人生は、信じられないほどの幸運に満ちていた――。日本文化を世界に紹介してきた著者。ブルックリンの少年時代、一人の日本兵もいなかったキスカ島、配給制下のケンブリッジ、終生の友・三島由紀夫の自殺……。日本国籍取得に至るまでの思い出すことのすべて。2019年2月、96歳で逝去した、偉大な日本文学研究者が書き遺した決定版自叙伝。『私と20世紀のクロニクル』を改題。新版に際し、「日本国籍取得決断の記」「六〇年の月日と終生の友人たち」の2篇を増補。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
88
昨年お亡くなりになったキーンさんの自伝。キーン氏が日本を愛しまれた全てが書かれている。また、川端康成・三島由紀夫に代表される作家達との交友録としても読める。日本はいつだって私が最後に行き着く場所なのだとキーン氏自身がこの著作の末尾に近い箇所で書かれている。そうしたキーン氏の日本との出逢いからほぼ別れに近い年代迄収録されているが、このキーン氏自身がクロニクルと呼ぶ著作は、実にいろいろなことを読者である僕に与えてくれ惹き込まれたたのである。歴史・日本人と米国人との考え方の違い・作家達の素顔書き込み等。2020/10/19
ワッピー
40
新聞連載の「百代の過客」を除けばおそらく初キーン。日本文学研究に至る様々な岐路を経て、ついに日本国籍を取得されたキーン氏の生い立ちから青年期、そして日本での交友関係と興味は尽きません。特に川端康成のノーベル文学賞受賞に絡む前後の事情、司馬遼太郎が酒の席で当時の朝日編集局長に「キーンを雇うべき」と言ったことから朝日の連載が始まったなど、全く知らないことばかりでした。ソ連での日本文学者との交流の緊張感も当時の状況が伝わってきます。今年は横道に逸れたくないのに、早くもキーン横町に足を踏み入れてしまった・・・2020/01/09
ヨーイチ
37
この人の著作は手に取ることが多い。まぁ読み易い奴ばっかりだけど。大震災絡みで日本国籍を取得した(そればかりでは無いにしても)時は結構感動したのを覚えている。研究者でも無いのにこの人に惹かれるのはこの人の多彩な活動時期と自分の「修養期」が一致していて、特に演劇分野にも及んでいるせいだと気がついた。多分三島由紀夫絡みで知ったのだと思う。傑作「サド侯爵夫人」の翻訳は正に偉業だろう。本文中にもキーンさんならではの貴重な見識が有る。続く2022/01/16
彼岸花
20
キーンさんは亡くなられましたが、私はまだ姿を追っています。あまりにも、この上ない功績が素晴らしく、偉大な方でした。こちらの本は、少年時代から、帰化されたつい最近までの手記ですが、キーンさんほど日本を理解し、愛した外国人は、他には見当たりません。日本を知る上での起点となったのは、源氏物語や悲惨な戦争体験でした。運命的な偶然性の糸が絡み合い、崇高な日本文学者の誕生は、歴史上でも、重要な役割を担っているのではないでしょうか。キーンさんの尽力により、多くの日本の文化や伝統を学べる喜びと、感謝の気持ちを捧げます。 2019/05/26
naotan
19
今まで名前だけは知っていた、キーンさんのことがよくわかる一冊でした。日本で道を尋ねられたのが嬉しかったというエピソードが印象に残ります。2019/05/19