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内容説明
貴君、僕は大阪へ行って来ようと思う――。一九五〇年秋、この一言から汽車に乗りたかった内田百間の『阿房列車』シリーズは始まった。以後、五年間にわたる全行程に同行した〈ヒマラヤ山系〉こと元国鉄職員の著者。百鬼園の旅と日常を豊富なエピソードを交えつつ綴った好エッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
66
百鬼園先生の『阿房列車』は何度も読み返した作品。その中で外すわけにはいかない名脇役としてヒマラヤ山系氏がいるのだが、本書は彼の目から見た百鬼園先生や阿房列車の裏話等が記述されている。著者の百鬼園先生を描いた本はもう何冊か読んでいるが、本書は題材のせいか特に両者の交流の記録が多いように描かれている。特に著者の目から見た阿房列車の思い出とか、百鬼園ファンならずとも読まずにはおられない内容だし。晩年や没後の記録なども、読んでいるうちにじんと来るなあ。『阿房列車』の汲めども尽きない魅力が、さらに深まる一冊でした。2021/09/03
六点
62
『阿房列車』シリーズで、百鬼園先生の名ワトソン役であり、全集の編纂も行った平山三郎の、内田百閒の在世中から、死後までの、思い出話が中心かと思いきや、百閒後半生の実質秘書の物語である。読んでて、本当に百閒先生のめんどくささに、読者は辟易するものの、著者はそれを楽しんでいるのかと言いたくなるくらいの愛情が、行間より溢れてくる。最晩年の思い出話は、そのめんどくささが消失し、好々爺になり、衰弱しきった百閒先生の姿に「生きる事は執着する事」であるのだなと、柄にもない事を思った。 2020/03/12
saga
48
酒井順子『鉄道無常』を読了して、積読だった本書を読む。著者は阿房列車シリーズで百閒のお供を務め、以後百閒が亡くなるまで陰に陽に支え続けた方。「貴君は汽車の旅行が好きかね」で幕を開ける阿呆列車の旅だが、それは明治生まれで鉄道好きの百閒が、空襲で焼け出されながらも太平洋戦争を乗り越えた先の戦後に実現したものだ。本書は、戦前からの百閒の生活や文筆活動が、著者の愛情にくるまれて記されている。そして百閒の手紙からも、平山氏のことを好きで頼っていたことがよく分かった。解説が酒井順子、それもまた良かった。2025/01/12
yumiha
47
内田百閒の阿房列車に必ず同行したヒマラヤ山系こと平山三郎氏の著作。ヒマラヤ山系って、なんだか歯切れの悪い返事ばかりしている国鉄職員…だけではなく、百閒の著作に長く関わって来られた、百閒の唯一の弟子と言うべき方だった。それだけに百閒の好き嫌いもこだわりも全て心得ていたからこそ、阿房列車の素っ気ない態度だったのか、と納得。また、「行ってきただけの直接経験は粗末」「暫く間を置いた方が本当のリアリズム」とか、「俳句というものは詠み捨てておけばいいもの」とか、百閒の表現における肝心かなめの姿勢を教えていただいた。2024/02/02
信兵衛
32
内田百閒、阿房列車のファンなら、飛び上がって喜びたくなる一冊であること、間違いなし。 最初の刊行は1965年、本書はそれから50年余を経ての再文庫化ですが、中身の面白さは全く衰えません。2018/11/30