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内容説明
「たとえば(パリ郊外)ジヴェルニーにあるモネの池は、手鏡。丸く広がり真ん中にかわいらしい花をちょこんとつける睡蓮は、ブローチ。モネは女性が『かわいい』と思うモチーフを追求し続けていた」「モネの睡蓮の池こそが、ジャポニスムの影響をふんだんに受けた作品」……。日本画家・平松礼二は24年前、オランジュリー美術館の「モネの部屋」で衝撃を受けて以来、モネの足跡をたどり、彼が北斎や広重をはじめ、ジャポニスムの影響を受けていたことを実感し、そのモチーフを日本画に変える挑戦を続けている。「彼の睡蓮の絵を見ると、驚くばかりに美の技術を極め、明白にモチーフを表現する画家の才能に感嘆するばかりだ」と語るのは、フランスのポンピドゥー美術館事務局長、ディエゴ・カンディール氏。こうして、美は永遠につながっていくのだ。本場フランスをはじめ、ヨーロッパの人びとを魅了してやまない日本画家が“画家の視点”で語る、いままでにないモネ論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kentaro
30
芸術家というものは、なかなかモネのようにはいかないもので、パリ画壇に反旗を翻して自分達の世界を追求したにも関わらず、人生の中後半期には、パリ画壇すら手なずけてしまった部分もあった。 例えばオランジェリー美術館のモネの部屋は、スポンサーとパリ画壇の双方を見方につけて製作したものだ。 ジャポニスムといえば必ず名前の挙がるゴッホとは対照的だ。 モネは常におおらかなこころの安定を得ているために、じつに自由におおらかな発想で新しい取り組みをした。 フロンティア精神にたけた画家だったという。2019/07/24
ほじゅどー
9
★★★現代日本画家もオランジュリーの「睡蓮」の部屋に衝撃を受けた。画家の眼から見たモネの魅力。モネはまるでカメラで定点観測するように連作「積み藁」「ルーアン大聖堂」「ポプラ並木」「睡蓮」を描いた。モネは光を求めて戸外に出た。その色彩感は柔らかく優しく鮮やか。モネは色を混ぜて中間色を塗り重ねている。この手法は岩絵の具を使った日本語の手法に近いもの。ジヴェルニーのモネの池は浮世絵の中の江戸の遊女の手鏡という仮説は面白い。季節と自然を映す鏡。オランジュリーの睡蓮の部屋は屏風絵からヒントを得たという仮説も。2019/02/08
はすのこ
9
タイトルの良書感と裏腹に、なんだこの内容...。2016/05/03
chika
6
日本画家である筆者独自の目線で、モネについて語る一冊。日本人が印象派を、モネを好きなのは教育のせいだ、と書いてありますが好きなものは好きなのです。そして教育のせいだといいつつ、日本画を愛したモネへの、モネの睡蓮への筆者の愛を感じます。そして日本画に対する愛も。筆者の作品を生で見たくなりました。2017/07/27
die_Stimme
5
画家である著者による「モネと私」という感じの本。感覚的には、マティスかモネかの違いはあれ一人の画家に憧れ抜いて画家である自身の個人史と憧れの画家との関わりをえがくという点で猪熊弦一郎の『マチスのみかた』に近いものを感じた。猪熊同様、平松も憧れのモネの絵画に着想を得た作品をいくつも描いているが、モネを日本画で描いたらどうなるかというコンセプトもある。カラーで掲載される平松自身の作品は想像以上に素晴らしかった。が、バイアスが強すぎたり主語が大きすぎたり、文章は良くない。平松の伝記として読むならまだいいと思う。2024/02/04