岩波新書<br> ユダヤ人とユダヤ教

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岩波新書
ユダヤ人とユダヤ教

  • 著者名:市川裕
  • 価格 ¥858(本体¥780)
  • 岩波書店(2019/05発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004317555

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内容説明

啓典の民,離散の民,交易の民,さまざまな呼び名をもつユダヤの人びと.苦難の歩みのなか,深遠な精神文化を育む一方,世を渡る現実的な悟性を磨いてきた.歴史をたどりながら,その信仰,学問,社会,文化を知る.

目次

目  次
   はじめに

 序 章 ユダヤ人とは誰か
   ポーランドにて/ 「真正のユダヤ人」
 第1章 歴史から見る
  第1節 古代のユダヤ人たち
   イエスの出現をどう捉えるか/賢者輩出の時代/啓示法の宗教
  第2節 イスラム世界からヨーロッパへ
   忘れられた歴史を補う/イスラムとともに/啓典の民/地中海社会での繁栄/アルプスを越えて/スファラディとアシュケナジ/レコンキスタとスペイン追放/新キリスト教徒の再改宗/安住の地ポーランド/シュテットルの生活
  第3節 国民国家のなかで
   メンデルスゾーン/フランス革命の衝撃/われわれは何者か?/ポグロムの恐怖/アウシュヴィッツへ/世界帝国の興亡とユダヤ人/ 「ユダヤ人」という選択肢
 第2章 信仰から見る
  第1節 ラビ・ユダヤ教
   ユダヤ教は宗教なのか/ユダイズムとユダヤ教/ユダイズムとは何か/持ち運びのできる国家/二重のトーラー/ラビたちの決断
  第2節 ユダヤ教の根本原則
   トーラーに従って生きる/神殿の供犠/シナゴーグの礼拝/シュマアの朗読/十八祈祷文、十戒、六一三戒
  第3節 神の時間秩序
   安息日/一年のサイクル/一生のサイクル/祈りの生活/制度化された断食
  第4節 「宗教」としてのユダヤ教
   東欧における神秘主義の浸透/近代のユダヤ教再定義/世俗化したユダヤ人と民族主義/二つの定義・三つの集団
 第3章 学問から見る
  第1節 タルムードの学問
   トーラーの学習/イェシヴァ/タルムードの普及/タルムードのテキスト
  第2節 論争と対話
   師匠への奉仕/モーセに基づかせる/矛盾をぶつけることの真意/ラビたちの議論
  第3節 ユダヤ哲学
   ギリシア哲学による挑戦/イスラム世界のギリシア哲学/哲学者マイモニデス/律法典の形成/ 『シュルハン・アルーフ』による統合
  第4節 ユダヤ精神の探究
   東欧の肥沃な精神世界/ヴォロジンのイェシヴァ/エリ・ヴィーゼルと二人の師/学ぶことは生きること/正真正銘のラビとの出会い/世俗教育との両立
 第4章 社会から見る
  第1節 ユダヤ人の経済活動
   商業と金融の民/利子取得の正当化/マルクスの主張/利子取得の二重基準/ロスチャイルド家
  第2節 ユダヤ人の人生の目標
   神に選ばれた民/ノアの七戒と十の心得/慈善と慈しみの行い/施しの八段階
  第3節 近代メシア論
   二つのメシア論/シオニズム/離散ユダヤ人は捕囚民か/ユダヤ的百家争鳴
  第4節 ユダヤ社会の現実
   ヘブライ語の蘇生/混合婚をめぐる議論/二極分化するユダヤ社会/イスラエル社会の現実/イスラエル国家のゆくえ/棄民の視点から
   文献解題
   歴史について/ユダヤ教について/ユダヤの宗教思想について/ユダヤ思想史について/トーラー註解について/タルムードについて/ユダヤ百科事典『ジュダイカ』
   あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

夜間飛行

224
かつてイスラム圏で自由に交易したユダヤ人は、十字軍や(ペストによる)ユダヤ憎悪に追われ、伊、和蘭、東欧などに移住した。仏革命後、人権思想の恩恵を受けるも、国民国家への同化は新たな迫害や仲間内の反発=シオニズムを生んだらしい。そもそも古代のローマへの敗戦~離散以来、ユダヤ共同体の精神的な支えはラビ・ユダヤ教だった。ラビ達はその核となる口伝律法をただ受け継ぐのではなく、論争をくり返しながら弁証法的で開かれた学問として語り伝えたという。レヴィナスはここに《他者を想定せざるを得ない》倫理的存在としての人間を見る。2021/10/24

旅するランナー

171
あなたは、心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くして、主なるあなたの神を愛しなさい。ユダヤ人・ユダヤ教とは何かを歴史・信仰・学問・社会という観点から考察する。読み進めていくうちに、離散・迫害・戒律など、すべての要素が日本人と真逆な民族に思えて、この人たちを真に理解することは不可能ではないかと感じます。2020/08/15

(haro-n)

84
ユダヤ人について世界史の知識しかなかった自分には良い入門書。捕囚(カナート)と離散(ディアスポラ)を強いられ彷徨し続けた彼らは、時にイスラム世界に時にヨーロッパ世界に於いて、商業や貿易に従事し、異民族として蔑視されながらも経済的な貢献を果たした。概説の後、信仰・学問・社会の三つの側面からユダヤを詳細に捉え直している。特に、ユダヤ人の歴史にとってのイスラム世界の重要性、ユダヤ人の三つの系統と迫害の歴史、ユダヤ教の教義とその発展の過程、ユダヤ人の信仰生活を興味深く学んだ。参考文献にバーリンがあって嬉しかった。2019/02/25

佐島楓

71
決して易しい本ではないが、歴史・信仰・学問・社会という多視点からのアプローチがされており、興味深く読んだ。ユダヤ教自体も一枚岩ではなく揺れている部分もあること、歴史的経緯の中で醸成されてきた民族性を感じ取れたことはよかったと思う。今後も理解を深めていきたい。2019/03/07

skunk_c

43
ユダヤについてコンパクトに概説した書。歴史は簡潔ながら要領を得ていて、特に離散以降のヨーロッパでの動きをイスラームの盛衰とリンクさせながら説明するあたりは初めて知ることも多かった。宗教と学問についてはやや難しかったが、信仰と理知を重視するため、そこに生じる矛盾をどう解決するかという議論を重ねる様子が興味深かった。社会については特に経済活動についてはやや弱い印象だが、シオニズムという民族主義とアメリカのユダヤ人のコスモポリタニズムの対比は面白く、イスラエルに対し「伝統の偶像化を排除せよ」との指摘は鋭い。2019/01/29

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