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内容説明
筑後柳河十三万石の領主立花宗茂を描く長編小説。秀吉をして「鎮西一の忠勇、天下無双の勇士なり」といわしめた宗茂の生涯は、戦っては義戦多く、常に寡兵をもって大軍を破り、その生きざまは信義一筋、まことに誠実・清廉なものであった。これは実父高橋紹運、養父立花道雪という両父の高潔な生き方を範としており、ゆえに本編は、この三人の父子像が中心のテーマとなっている。ともに大友家の加判衆であった両父は、当主宗麟を守り立てる立場にある。たとえ非道な仕打ちにあったとしても、決して当主を見放さず、己の運命として受けとめ、恥じることのない生涯を終えるのである。この愚直なまでの廉潔な生き方を、著者は現今の知的ノウハウ重視の風潮に対するアンチテーゼとして提示、また自立する女性として描かれる妻ぎん千代と宗茂との葛藤も、今日的なテーマとして見事に描出している。現代人の心を癒し、人間の温もりをほのぼのとつたえる力作である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MIKETOM
7
あとがきに『権勢欲も領土的野心もない。信義に篤く、めっぽう戦が強い。小勢で大軍を破り他人の危急を救う義戦が多かった』と書いてある。さらに言えば主君に忠実で配下や領民にも慕われた。まさに戦国武将の鑑。戦国時代屈指の名将、実父の高橋紹雲、養父の立花道雪もまたそんな男たちだった。そういう生き様が誰からも好感を持って受け入れられ、関ケ原では西軍に味方したため領土を失ったが、東軍の加藤清正や本田忠勝などの強力なプッシュもあって後に大名に返り咲いている。この経歴を持つのは宗茂ただ一人なのだ。印象を一言で言えば→2023/12/24
円盤人
5
巻末、解説者が司馬や吉川らと並べて作者を賛美するのはおおげさとしても、確かに実力者の作品だ。物語構成は王道で、立花道雪・高橋紹運・宗茂の、おなじみの三者一体的な描き方だが、誾千代とのすれ違いに名護屋城の一件(言い寄ってきた太閤を撃退したという俗説がある)を使うなど展開が巧みだ。それが最初の一万田鑑相の逸話(大友家没落を招いた宗麟の好色)とリンクするのも上手い。宗茂の小説には珍しく丸目蔵人も登場、島津義弘や本多忠勝との交流も清々しく描かれる。なぜか最後、地震に言及して唐突に終わってしまうことだけが惜しい。2021/03/09
depo
2
図書館リサイクル本。戦国時代を愚直に生き抜いた人物。福岡県の柳川市にある「御花」が立花氏の邸宅であることは知っていたが、その祖立花宗茂については全く知らなかった。2023/09/17
しゅんどーん
1
秀吉が本多平八郎と並べて「東西の豪傑」と称賛した柳河藩主・立花宗茂を生き生きと描き出す。2019/04/10
おかゆ
0
立花道雪・高橋紹運の男前度を受け継いだ宗茂の格好良さと、そして誾千代とのすれ違い夫婦愛が良い感じでした。お互い想い合っているのに最期でしか分かり合えない二人が悲しい。2010/02/13