内容説明
心臓移植手術を受けながら、生物学者はどんな夢を見たのか(「デニス・ノーブルの心臓」)。ダイアナ妃に憧れた少女が語る、プリンセスの結婚から死去までの日々とは(「ダイアナを夢見て:十二フレーム」)。“聖戦”に参加するためリクルーターの電話を待つイスラム教徒の青年たちは、観光地で何を思うのか(「ラディカル・フィッシュを褒めたたえて」)。芸術家の老女が、家のあちこちにいる幽霊たちへ向ける想いとは(「すべての愛しい幽霊たち」)。幅広い分野の著名人たち、そして世間に名前の知られていない市井の人々。彼らの人生がさりげない語り口で描かれ、浮かび上がる鮮烈なイメージが、わたしたちの心を奪う。ブッカー賞候補作家が贈る、切なさと愛おしさに満ちた12編。カナダ総督文学賞最終候補作。/【収録作】「雪解け」/「ソロで、アカペラで」/「デニス・ノーブルの心臓」/「シルヴィアはあの世でピンクの服を着る」/「大切なものがある」/「オシレイト・ワイルドリー」/「ダイアナを夢見て:十二フレーム」/「ラディカル・フィッシュを褒めたたえて」/「チェーホフを思いながら」/「市民による逮捕の方法」/「わたしたちはメソジスト教徒だ」/「すべての愛しい幽霊たち」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆのん
61
ダイアナ妃やチェーホフ、政治家のブレアなどなど有名人の登場する物語と名もなき市井の人々の物語。静かで情緒のある仕上がり。短編集なので比較的読みやすかった。『雪解け』『デニス・ノーブルの心臓』『大切なものがある』『すべての愛しい幽霊達たち』が良かった。3252019/10/25
サラダボウル
14
12編の独立した短編集。外国文学と意識せずに読めるものと、無理だ、わからない‥というとのとあった。数編だけど読み進める。表題通り、死があり、生がある。読みながら、外国旅行で出会う早朝の感覚にだぶる。歩く人と視線がぶつかった時の、「あなたには何もわからない」とじっと見つめられるような感覚。でも、その異国の生と死の結晶のような本作に、自分を重ね、思うことがある。ふわりと何かに腕をつかまれたような、読後感が残る。2020/10/11
くさてる
11
幅広い分野の有名人、あるいは市井のひとびと。その肉声で語られる彼ら自身の人生。それがストレートな形ではなく、どこか幻想みがあったり寓話めいていたりした形で表現されていて面白かったです。モデルになった人について知らなかったり分からなかった話もありましたが、そこは問題なし。詩に近い幻想譚「シルヴィアはあの世でピンクの服を着る」混み合うバスに乗り合わせた人々の意識が交錯する「大切なものがある」帰還兵の配管工と雇い主の話「わたしたちはメソジスト教徒だ」表題作「すべての愛しい幽霊たち」が印象に残った。2019/05/05
rinakko
9
よかった。とりわけ好きだった「ダイアナを夢みて:十二フレーム」は、ダイアナに憧れて髪型も“レディー・ダイ”にした16歳の少女の一途な憧憬からの、自分を愛してはいない男性と結婚してしまった主人公の味気ない日々への幻滅が残酷に刺さる。そして元ダイアナ妃の人生、その光と影…。かけ離れた二人の女性の悲哀がどこか被ってくるのも切なかった。そして表題作も、老嬢好きな私にはぐっときた。かつて家族と住んだ古い家で、一人きりであると同時に懐かしい幽霊たちの存在に囲まれたアンジェリカが無性に愛おしい。2019/05/24
ののまる
7
どの短編も好き。特に「大切なものがある」「市民による逮捕の方法」。2020/12/25