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内容説明
この街は生き物の腐ったにおいがする――。引越し先の漁師町になじめない硝子の憂鬱『泳ぐ花』
夏休み。うろこが身体に生えた親友のミナミをプールで飼うことになったナギサの動揺。『適者生存』
事故で死んだ親友のサキと同居するマユ。美しかったサキが日々朽ちていくのを見つめるマユの安堵。『やさしい棺桶』
卒業を控え、ずっとそばにいたハルカと離れ離れになることに耐えきれないカオリの焦燥。『春の蛹』
ウェブや同人誌即売会で発表された8編に加筆、さらに描きおろし4編をくわえ、大ボリュームでお届けする注目の作家・冬虫カイコの作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
内島菫
19
娘が珍しく発売日に本屋で購入した本を、彼女からすすめられて読む。絵はうまいが独特の固さがあり、それが水しぶきや梅の描写に出ていて不思議な風合いを醸し出している。今どきの女子高生たちの少しひねくれた視点で描かれた短編漫画集だが、そのひねくれはひねくれと言うより、若さの持つ過敏さや過剰さ、残酷さであるだろう。境界的な年齢特有の不安定さを、メタモルフォーシスへとうまくつなげている。2019/04/18
kujira
5
なんていうか、読んでてしんどい。目を背けたくなるしんどさというか、「正直あんまり直視はしたくないけど、成り行きは見守らなきゃいけないような気がするから薄眼を開けて見ておきたい」感じのしんどさ。精神的にグロテスクな感じ。うまいんだけど、うまいが故にしんどい。2019/12/28
コリエル
4
著者の同人誌集成らしい。渇いた絵柄がちょっと気に入って読んだ。やはり表題作が一番印象的かな。多感な時期の少女たちをモチーフに、不定なもの・変化変形するものとして描いた短編が多かったが、ややありきたりな描き方に感じられた。今後より一層の発展に期待ということで。2019/04/13
浜簪
3
ほろ苦い青春、なんて生易しいものではなく、エゴや狂気を存分に孕んだ作品集でした。それでいて頁を捲る手は止まらず、面白かったです。最後の「春の蛹」が一番好きです。2019/05/13
Fumitaka
2
『泳ぐ花』、先生が怒る場面が本当に怖いな(pp. 47-8)。子供の目線を写し取っている。それは『母と姉』の身勝手な母親とも似通って見える(p. 139)。花を踏んでる絵(p. 34)がいいですね。『やさしい棺桶』の友達の母親もやや危険な気配がする。マユが一人で夢を見ていたのかもしれない。すごく短い短編『あなたのことは好きなんだけど』『離郷』、僕は「あの二人は両想い(だった)」もしくは「片方が片方を物凄く愛している」と解釈しましたがどうでしょう。2024/03/28