文春文庫<br> 界

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文春文庫

  • 著者名:藤沢周【著】
  • 価格 ¥713(本体¥649)
  • 文藝春秋(2019/04発売)
  • GWに本を読もう!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~5/6)
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  • ISBN:9784167912567

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内容説明

「こんな危うい物語に出会うとは……。」(姜尚中氏)
求めるのは解脱か救いか? 日本の「界」を漂流する男。

妻子と別居中の榊は、恋人を東京に残したまま、地霊うごめく土地を遍歴する。
秋田の娼家と清廉な女子高生たち、厳冬の佐渡で理容店の女主人が持つ剃刀、三河八橋で一夜を共にした人妻の乳房、非在ゆえに一層ふくらむ女たちの気配――。
官能と死のあわいから異界が立ち現れる瞬間を描く、本格小説集。

解説・姜尚中

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

鉄之助

273
ねっとり、まとわりつくような「エロス」と「匂い」が散りばめられた連作短編集だった。50過ぎ男が、歌枕に登場するような風韻な全国各地を放浪。指宿の砂風呂では、「見知らぬ女が覆い被さってくるのを想像させる。……このまま砂に埋もれて、白骨化するのもありだよねえ」。意表を突く”転調”も良かった。天井のスプリンクラーの影を見てアポロ11号の長い影を連想。ミニチュアのアームストロング船長が、天井を歩いて、月の石ではなく誰かの骨を拾おうとする。「生きていれば、へばりつくものだらけだ」。名言だなぁ!2023/05/11

ケンイチミズバ

106
お母さん必ず立派に体当たり致します。今の平和があるのは英霊たちのおかげだから、っていうのも嘘。戦死した人たちは決して浮かばれない。それを美化するのはもっと嘘です。女といっしょの時間にこんな口論になるのは嫌だとわかっていながら誘う。知覧に行くなら私は行かないと言われ、行く行かないで揉める。結局遺書を読んで恥ずかしいくらい号泣してしまい、年配の同行者からも驚かれる。その後、歓楽街で飲みながら来なかった女との情事を思い出してポコチンが硬くなっている時もチラチラ遺書の文言が頭をよぎる。こんな文学もありなのかあ。2020/02/06

南雲吾朗

58
ただの中年エロジジィをこれ程までかっこよく描けるものか?!盛りの時期を過ぎた寂しさを漂わせつつ、それでいてどこか獣じみた男。日常に突然浮かぶ退廃的で艶めかしい記憶。街の喧騒の中、ふっと、自分が何処に居るのか、今はいつなのかが解らなくなる不安。現実と非現実の境界が曖昧になる。この人はなぜこんな描写が出来るのだろう?世界の見方が常人とは異なる、まるで異界の者の見方。まさに怪物、藤沢周。この小説が「界」と名付けられたのも納得。2019/07/01

hit4papa

51
榊という名の、妻と別居中の、一回り下の愛人がいる、新潟出身の、50代の作家らしい人物が、行く先々で物思いに耽る連作短編集です。著者その人を投影しているのでしょうか。読み進めるうちに主役のバックボーンが分かってくるのですが、全編を通して、この年代独特の倦んでいる感が漂います。大きな出来事か起きるわけではありませんが、作家の目を通すと、異界の入り口にいるような錯覚に陥ります。登場する女性たちへの、主人公の視線は、少々枯れかけたエロチックさがありますね。「指宿」「化野」などのその地のトリビアは興味を惹かれます。2022/11/08

torami

33
短編9本。 最初二つくらいまでは、「えっろいことばっかやなこのすけべオヤジ」と中学生じみた感想を抱いていたが、今まで私が触れてきたものとは様相が異なることに俄に気づき始める。そうか、これがエロスというものか、と。 なるほど確かに榊の妄想は不埒なのだが、そこには品があり趣があり儚さがあった。 不思議な引力で目に留まり、レジに持っていった本。それは妖しげな界(さかい)に引きずりこまれるかのような読書体験だった。 付け足し。新潟、横浜と縁のある土地が登場するのもよかったです。この二ヶ所には弱いのです。2019/05/02

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