内容説明
アロマオイルを纏(まと)った肌をぶつけ合い、のぼり立つ匂い。調香師との情事は、私に長い愛人生活を終わらせる予感を抱かせた。あの光景を目にするまでは――(「アンビバレンス」)。年上の人妻経営者に持ちかけられた三か月間の恋人契約。俺に抱かれ、女の喜びを感じると話していた彼女は、なぜ突然いなくなったのだろう(「バタフライ」)。記憶と熱を一瞬で呼び覚ます特別な香り。五編の恋愛小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まさきち
81
香を足下に据えて紡がれた恋愛譚5編を集めた短編集。非常にさらっとした印象の一冊でした。2020/02/02
M
72
なぜか陳腐で軽薄というようにしか感じられず。いい大人の女が恋愛において変な受け身でしかなく、精神が成熟していないから不安定な恋愛関係…著者は芸術家気取りの粋がった若年のままのような乱暴な口調と子供じみた態度のダメンズが好みなのかしら。自分がそういうのに一切男の魅力を感じないせいか、物語全般に大人っぽい香りと恋愛を絡めてあるものの、内実は大人気取りでしかない幼稚な恋愛模様に終始イライラモヤモヤ(笑)2018/12/03
りゅう☆
66
妻子ある男性と不倫中だが調香師と恋をするも彼のある行動を許せず…。/夫の浮気で離婚後、同窓会に参加して元彼と再会。彼が家業を継ぎ別れたが、今だからこそ分かる彼の決意。/年上の人妻と3ヶ月の恋人契約を結んだが彼女が去った理由を知って…。/パニック障害から救ってくれたのは骨董店の店主。一目惚れの豆柴に毒親はなんて酷いことを!/地震に不安を感じる中、愛猫が最期を迎えようとしてる時に来た元夫を愛した時もあったけど純度の高い執着は愛猫に対してだったことを実感。/性愛と香りの関係が深く絡まり合うのが艶めかしく美しい。2024/06/09
佐島楓
65
いくつになっても恋愛や個人的な悩みでひとはたやすく揺らいでしまう。そしてひととひとの出会いは素晴らしい。2018/11/02
もぐたん
61
無神経そうで繊細、繊細そうで無神経。真逆の男との二股の決着のきっかけは意外にも愛しいインコだった「アンビバレンス」を筆頭に、香りが切なさを呼び覚ます短編集。本能を直接刺激する香りは、女たちの未来への選択にも少なからず影響している。彼女たちの選択に寄り添えたりそうでなかったりだが、もっと濃厚な大人の時間にどっぷり浸りたかった。ただ、こんなあっさりした後味も悪くない。村山作品ならではの戸惑いと力強さを感じる一冊。★★★☆☆2023/07/29