内容説明
耳が不自由なことを言い訳に他人と距離を置きたがる吉澤詠斗は、高校2年の春、聴こえないはずの声を耳にする。その声の主は、春休み中に亡くなった1つ年上の先輩・羽場美由紀だった。詠斗にだけ聴こえる死者・美由紀の声。彼女は詠斗に、自分を殺した真犯人を捜してほしいと懇願する。詠斗は、その願いを叶えるべく奔走するが――。人との絆、本当の強さなど、大切なことに気付かせてくれる青春ミステリー。2018年「小説家になろう×スターツ出版文庫大賞」フリーテーマ部門賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のり
16
デビュー作なのかな。耳の聞こえなくなった詠斗だけが聴こえる声の主は、同じ学校の殺されてしまった美由紀だった。刑事の兄、友達と犯人を探す事になる。美由紀が殺された割に穏やかなのは気になるが、小学高学年くらいのミステリー初心者向けとも言える、わかりやすいお話でした。2019/04/01
ひよ子
7
ミステリーが初めてという中高生の読者さんにも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。事件が解決したらそれで終わりではない、登場人物の人生はこれからも続いていくんだと思わせてくれる素晴らしい作品でした。私はミステリーも青春小説も好きなのですが、どちらの要素も非常に満足できるものでした。作者さまがあとがきで投げかけてくださったテーマを、私も考えながら読んでいました。作中で語った美由紀先輩の『答え』を、たくさんの人に読んで、感じていただきたいです。2019/02/17
Nori
4
生まれつき聴覚に障害があり、その後全く音が聞こえなくなった男子高校生が、殺された高校の先輩の幽霊の声だけ聴こえるようになり、友達の力を借りて先輩を殺した犯人を捜していく青春ミステリ。本当の強さは飾らない自分でいること、ていうのは僕からしたら非常に耳の痛い言葉だと思いました。2023/02/19
なみ
3
耳の不自由な詠斗はある日、殺された女子生徒、美由紀の声を聴く。美由紀は、自分が殺された事件の真相を知りたいと詠斗に頼むが、再び殺人事件が起きて……。 ミステリーとしても青春ものとしても、非常に楽しく読むことができました。 誰かに頼らず生きていく強さもあれば、誰かに頼る強さもあって──。 詠斗が美由紀と出会えて良かった。心からそう思える結末でした。2018/12/31
てんてつ
0
音のない世界。主人公詠斗は突然にそこに放り込まれたのではなく、やがて自分周りから音がなくなる、そう覚悟を決めていたせいか悲観に暮れていない。しかし事件で殺されてしまった美由紀先輩の声を聞くことができ、彼女の願いに沿いながらひさしぶりに他人と会話できる幸せを感じ、ひとりでいいや、と言っていたのが強がりだったと自覚する。死んでしまった彼女は現状を受け入れなおかつ理由を知りたいと前向きで、その姿に生きる強さを感じなぜそう受け入れられるのか尋ねる。すぐには答えは得られず事件を追う中で彼自らが考えることになります。2019/10/11