内容説明
敗戦まもない北の地・帯広で、深く結核に冒されながら、初めて上梓した魂の書『ボードレールの世界』。愛と孤独と死の意識を追求し、全精神、全人生の精髄としての風景をボードレールに見た、心の深みを凝視し続ける福永武彦の文学の原点。秀作「詩人としてのボードレール」「ボードレール的人生」「ボードレール年譜」を併録。青春の原点を示す代表的評論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
15
ボードレールの詩は『悪の華』を完成させるためだけに全生涯を捧げた詩人というように読むのは敗戦後に療養中にあった影響からか、冥府(冥界)から、女たちの悪徳、そしてパリの欲望となるのだが、さらに「万物照応」はパリと対になるような桃源郷(天国か)を求めていく(それがギリシャ的なものなのか、「シテール島への旅」を頂点とする)。そこに旅と音楽があり、渡鳥のように光を求めていくのだった。それは堀辰雄から宮崎駿路線のように感じられた(今までボードレールはベンヤミンに沿って読んでいたので)。その明るさは新鮮だった。2026/04/11
村上駿斗
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小説家にして詩人、仏文学者でもある福永が、ボードレールに捧げた想いの深さを感じさせる論文集。詩人が己の内面を外界に投射し、投射された事物によって再び自己の内面を構成する過程、事物の言葉になる以前の声「原音楽」を異なる言葉の並置によって浮かび上がらせようとする手法、ボードレールにおける匂いや記憶の重要、醒めてしまうことを知りながら危険な快楽に耽り込まずにはいられない詩人の悲劇、などがすでに福永によって指摘されていたことに、驚かずにはいられなかった。詳細をきわめる年表も含め、今なお価値を失わない一冊。2021/07/23




