内容説明
気鋭の映画批評家が、料理本を批評的に読む。「料理を作る・食べる・もてなす」ことに人生を捧げてきた人びとへの熱いオマージュ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
103
「あらゆる人間に正しい言い分がある。それが最も恐ろしいことだ」フランス映画の名作『ゲームの規則』1939のなかの監督ジャン・ルノワール自身の演じる登場人物の有名な台詞。「おいしさ」にも、ひとりひとりの正しさがある。本書は、料理に関する本をネタに著者が信じる「正しい言い分」を語るのだが、それがとても楽しい。イタリアから久々に日本に帰り、ビールを飲んだ時、亜熱帯の蒸し暑さの中で飲むビールのうまさは日本でしか味わえないものと感じた。20冊の本を巡り、最後に取り上げた本は故郷福島で感じた原発後の食であった。2022/07/03
ホークス
36
2019年刊。ワクワクさせる食のエッセイ。食関連の本(丸元淑生、有元葉子、山本益博など)から考察してゆく。信じこまず、ラベリングせず、疑問を丁寧に深めてゆく姿勢が爽やか。スローフード運動が、啓蒙的であるほど土着から遠のき、エリート趣味に傾いてしまう矛盾を考える。結論には至らないが、留保しつつ長く深く考える誠実さがある。「体にいいものは美味しいのか」の論考も分かりやすく得心できた。そして、原発事故とコミュニケーションについての考察は、今突き詰められる限界点だと思う。この書き手に出会えて良かった。2025/06/09
くさてる
22
食に関する本、料理研究家の著書、食べることにまつわるエッセイなどを、著者自身の体験というフィルターを通して再構成していくような感覚で読んで、面白かった。名前だけ知っていて、未読の著者の紹介では、読んでみたくなったり、あ、生理的に無理だと思ったり。食べることと栄養学がスピリチュアルな領域に踏み込んでいく危うさとバランスについて触れているあたりがとても興味深かった。2021/05/19
ほし
17
料理本批評の本。あとがきで筆者が述べている「ただたんにおいしいものを数え上げていくということではなく、『おいしい』と感じるその感受性のかたちそれ自体を数え上げることが目指されている」という目論見のとおり、様々な料理本の批評を通じることで、ただ単に美味しいかどうかではない、「食」そのものの魅力が語られています。食という人によって嗜好が大きく違うテーマを扱いながら、読後感が決して悪くないのは、筆者の惜しみない食への愛情ゆえでしょうか。最後の福島の章は素晴らしく、批評という行為の底力をも感じるようでした。2021/12/06
tetsubun1000mg
16
映画評論家が書いた「食べたくなる本」というタイトルが面白い。 何のことかとおもえば「料理研究家の料理本」についてのエッセイというより考察のようです。 紹介している料理研究家は、私にはなじみのない「高山なおみ」「丸元叔生」「有元葉子」さんなどの本を取り上げている。 本の書き方や、食材、調理法にもとんでもないこだわりがあり、常人にはとても届かないレベルの高さだが、著者は実際に作ってみたりする。 1本1万8千円のエキストラバージンオリーブオイルで揚げ物など、徹底したこだわりと料理人の生き方に意義があるのだろう。2020/02/24
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