内容説明
賛否両極の問題作!
デビュー15年、第一創作集、3度目の復刊!
不遇に果てた大正期の私小説家・藤澤清造。その負の存在に心の支えを見出し“歿後弟子”を目指す男の捨て身の日々。“師”に明け暮れ墓守りを行い、資料探しに奔走して全集作りに注力する情熱は、自らの人生を完全に賭した、不屈で強靱な意志と同義のものであった。同人誌発表の処女作「墓前生活」、商業誌第一作の「一夜」を併録。現在に至るも極端な好悪、明確な賞賛と顰蹙を呼び続ける問題の第一創作集、3度目の復刊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こうすけ
22
西村賢太の、デビュー作を含む中短編集。秋恵がひたすらかわいそうになる。しかし秋恵に出会ってなかったら、西村賢太は藤澤清造の在野研究者でしかなかっただろう。初期作だからか、以降の作に比べて文章がややもたっとしている。2022/07/11
きょん
12
藤澤清造の没後弟子を自認する主人公が墓参りや周回忌を企画し、その足跡を後世に残すべく奮闘する、、、と言えば聞こえはいいが、そこはそれ、北町貫太(まだこの名前は名乗っていないが)。親切な副住職や万にひとつの確率?で同棲にこぎつけた女にも卑屈かつ居丈高に振る舞い、女には暴力も。もうこの人の嫌ったらしさときたら!本当にこの描写、うまいわ。というべきか?胸くそ悪いんだけど読んでしまう。自業自得というべきか。2023/05/01
tomoka
11
西村作品を読むのは4冊目くらいなので、クズ男ぶりには免疫ができたようだが、自分のことを「ぼく」、そばを「お蕎麦」と言うあたりはギャップと違和感を感じる。でもそこがおもしろくもあるから不思議。2022/08/01
イータン
9
藤澤清造愛に溢れている私小説。読んでいていい気分はしないDVの場面はあるが、なぜか読み進めてしまいたくなるほど不思議な小説だ。それを解説がわかりやすく書いてくれていた。 『藤澤清造に少しでも近づけることを求めながら、自らは小説家になることを目指していなかった西村賢太の私小説にその種(作家になることを目指し私小説というジャンルを選び、自分を美化して描くこと)の美化はない。なるほど彼の小説に登場する「私」は常に愚者である。すれはすがすがしくも本当の愚者である。だから西村賢太の小説は不思議にあと味が悪くない。』2024/02/02
ランラン
9
著者の本は初めて読みました。私小説と知らずに読み始め最初違和感があったが徐々に引きずり込まれました。理由は清造氏への一途さと感情がストレートで予想通りの破滅の方向にいってしまう何ともいえない展開に嵌っていったといえる。52歳の死は早すぎる。2023/07/29