内容説明
戦時下のパリ。徴用近づく高等学校生のピエールと、絵描きとして家計を助けるリュース。地下鉄車内で出会った2人は、ドイツ軍の爆撃に遭遇し、とっさに手を握り、惹かれあう……。若い男女の清純な恋愛が、醜く恐ろしい戦争の現実と、あざやかなコントラストをもって描かれる。第一次大戦下に執筆され、1920年に発表された。ノーベル文学賞作家が紡いだ、100年読み継がれる「初恋・悲恋」の物語。映画『また逢う日まで』の原作、ガラス越しのキスシーンで話題に。(1950年東宝、今井正監督、主演:岡田英次・久我美子)
●目次 ピエールとリュース 解説(渡辺淳):(1)ロラン理解のために~ヨーロッパの良心、ロマンロラン~ (2)『ピエールとリュース』について あとがき(渡辺淳):新版のために 付録:『ピエールとリュース』復刻に際して
目次
1:ピエールとリュース 2:解説 渡辺淳 (1)ロラン理解のために―ヨーロッパの良心、ロマン・ロラン― (2)『ピエールとリュース』について 3:あとがき――新版のために 渡辺淳 4:付録――『ピエールとリュース』復刻に際して
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mt
29
戦禍が広がるなか、ピエールとリュースは地下鉄で出会った。最後は痛ましい結末が訪れるが、それだけの悲恋物陰ではなさそうだ。ブルジョア階級に生まれたピエールは、国家権力を神聖化する父、敬虔なクリスチャンであり戦争に肯定的な母のもと、「情愛は大きいが親密さは皆無」な家庭に育つ。貧しい純朴なリュースと知り合い、まだ無垢なピエールは、一層戦争から意識を遠ざける。反戦を貫いた著者は、空襲の音以外、戦争の細部を書かなかったが、恋人に忍び寄る暗い影を際立たせるため、家庭と戦争社会から二人を孤立した世界においたのだろうか。2016/08/31
かもめ通信
22
書評サイト本が好き!を通じての頂き物。1918年のドイツ軍によって空爆を受けるパリの街を舞台に語られるのは,数ヶ月後に徴兵されることが決まっている悩める青年ピエールと貧しいながらも生きることにひたむきなリュースの愛の物語だ。ロマン・ロランは,この2人の架空の人物を実際にあった出来事に遭遇させることで,戦うことのむなしさ,戦争の悲惨さを際立たせる。そしてもちろん愛も夢も希望も,なにもかも奪い取られたのは,この若い2人だけではなかったのだと,時を経た今もその著作を通して読む者に訴え続けている。2016/01/05
たまきら
16
どこにでも芽生えうる、純粋な若者二人の清らかで激しく、せっぱつまった愛。戦争を憎み、反対し続けた著者によるこの短編には、今の時代の若者にこそ読んでほしい、という訳者の強い情熱が傾けられていて、胸が熱くなります。角川さんの言葉は、文庫本の最後に掲載されていますが、こうして読み返すと真の愛国心とは何か、を考えさせられます。戦争しか知らずに育ち、亡くなった全ての若者たち・子供たちを想いつつ。2016/07/26
さや
16
これほど美しい愛の物語が他にあるだろうか。完璧な愛は2人の無情な死によう完成されたようだ。戦争の中、出会うべくして出会ったふたり。ただ行きたいと望む中で少しの幸福を願って何が悪い?不自由な戦争な時代でひたすらに互いの愛を深める姿はただひたすらに美しい。戦争の時代を真摯に生き抜いたロランだからこそ書ける物語であった。2016/02/19
じゅん
13
オフ会でいただいた本。戦時下における男女の恋愛。結末は予測できていたけど、やっぱり切ない。ずいぶん昔の本だが、今の時代にも必要な一冊。2016/11/24
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