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内容説明
真言宗の聖典が初心者でもわかる! 空海が秘匿し、最澄との仲違いの原因になったといわれる理趣経は、毎朝毎夕に、真言宗寺院で必ず読誦される。この経典が性の快楽を認めるのは、根源的な行為を肯定することで、煩悩を含めた人間存在そのものをまるごと肯定しようと試みたためである。難解の極みとされてきた原文を、わかりやすく現代語訳。教えの神髄を、大胆かつ平易に、現在の最新研究の成果をふまえて正確に伝える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
58
真言宗で毎日読誦される理趣経。真言の教理には暗い事や立川流に関連しているという事で、読む前は多少色眼鏡があったものの、読んでみると普通の大乗の経典であった。密教というと護摩に代表されるように主に呪法という印象だったけど、これを読むとやはり大乗と地続きだったんだとわからされる。本書の内容は理趣経の要約と歴史的意義から始まり、邦訳、内容の解説と理趣経が分かりやすく解説されていて、初心者にはありがたい。顕教の徒としてはやはり曼荼羅はよくわからないけど。読むと何となく遠くにあった真言が近くなったような気がします。2019/05/14
90ac
31
毎朝、声帯のトレーニングのために理趣経を音読していますが、分からない言葉の意味を調べるために買った物です。かなり噛み砕いた訳になっていてちょっと残念です。例えば第三段に「無戯論性」という言葉がありますが、漢字の意味から考えると「戯れではない論理性」という感じに取れます。しかし訳は「善とか悪とかの分別を超えるもの」となっており、漢字からはまったくかけ想像できない訳です。後半に「理趣釈経」に説かれる曼荼羅の説明がありますが、十七段の曼荼羅は空海がこれを最澄に貸さなかった理由がここにありそうです。2021/10/02
ホシ
24
真言宗の常用経典であり、「男女の性的な快楽は菩薩の境地である」と説くことで名高い『理趣経』。経文は漢音で読むこと、本経典を唐から持ち帰ったのは空海ではなく最澄であること、『理趣経』より重要なのは注釈書の『理趣釈経』であること等、知り得る所が多かったです。中でも「宇宙の生命をあまねく殺害しても、この経典を護持するならば悟りを得られる」という第三段は殺人肯定の教義とも取れ、オウムがなぜ密教をベースにしたのか腑に落ちる思いがしました。性や殺害に正面切って向き合った経典だけに、秘匿とされる理由も分かります。2019/08/16
Porco
18
仏典の読み方について解説した本は初めて読んだように思います。とても勉強になりました。日本人として、仏典の知識はもうちょっと身につけたい気がします。2020/01/21
テツ
11
真言宗で用いられる『理趣経』の現代語訳と解説。別に宗教としてどちらが上だとか優れているだとかいう話ではなく、単純にそういうものというだけの話なのだけれど、やたらと厳しく罰を与えようとする諸々の宗教と比べて、仏教的な価値観の根底にある「ありとあらゆる全てをひっくるめて人間という存在を肯定しようとする」考え方って救われるよな。その個人の内側に秘める正しさも邪悪さも関係ない。人間を救う。人間は救われる。人間が存在する上での営みを諦観し受け入れ救いがあると説く。これに全てを委ねることが出来たらどんなに楽だろう。2023/10/06