内容説明
編集者冥利とは人との出会いの冥利です――。安岡章太郎「悪い仲間」のモデル、雑誌『季刊藝術』の編集同人、そして戦争文学の最終走者として知られた芥川賞作家の自伝的エッセイ&交友録。表題作をはじめ単行本未収録作品を多数含む文庫オリジナル編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
17
中公文庫新刊。荻原魚雷さんの解説と編集者としての興味から。著者の事は全然知りませんでした。芥川賞作家で安岡章太郎さんと親しかったのですか。49歳から小説を書き始めたとは遅咲きですね。河出書房で編集を経験されて一度目の倒産を経験します。この辺の世代の著者は安岡章太郎さん含め余り読んだ経験は無いのですが、エッセイ、対談(安岡章太郎)、鼎談(江藤淳、森敦)など楽しめました。2018/09/02
ステビア
15
昔「プレオー8の夜明け」を読んだくらいだがタイトルに惹かれよんでみた。河出書房時代の佐藤春夫や岸田國士との思い出が書かれている。2020/03/25
スプリント
5
著者についても時代背景についても基礎知識が不足してただ読み進めるのみでした。関連する書籍を読まないと記憶に定着はしないだろうな・・・。巻末の「裸の群」はインパクトあり。2018/11/04
はるたろうQQ
3
古山高麗は自分を軟弱なダメ人間と言っているが、とても頑固者だ。下士官になることを拒否し万年一等兵として、ミャンマーや中国雲南省等を転戦し、運悪く戦犯容疑で収容され復員した。その間も、それ以前も、自分の考えることだけは自由で誰もそれを奪えないとの信念を基に一般的な生き方からは降りて生きていた。田中小実昌を評した「どう思われようと、どう言われようと、自分の流儀で孤独に生きる人である。」という言葉は古山本人にも当てはまる。彼は編集者として作家が自らの自由な考えを表現するという点を守ることを貫いて生きていく。2018/09/21
ラム
0
古山高麗雄といえば小説「プレオー8の夜明け」の印象しかないが、本書は文庫オリジナルで随筆を編んだもの 編集者としてのキャリアが長く、本書にも編集者当時を振り返ったものが多いが、やはり表題作に尽きる 遠山一行、江藤淳との出会いを経て作家古山高麗雄が誕生するまでを綴る 韜晦癖とでもいえる自己卑下が目立つ一方、作家としての自負も垣間見える 戦争を書くこと、私小説を書くことの微妙な心情の吐露が印象的 Ⅲ章は師と仰ぐ岸田國士などの素描 江藤淳への追悼は胸に迫る Ⅳ章は対談、鼎談と講演と幻のデビュー作「裸の群」2022/01/28