内容説明
永井荷風は大正九年五月、東京・麻布市兵衛町に居を移し、以来、洋館「偏奇館」に二十五年暮らした。本書は彼の地で執筆した短篇小説「雨瀟瀟」「雪解」、随筆「花火」「偏奇館漫録」「隠居のこごと」など全十四編を収める。抒情的散文の美しさを伝える作品集。「自選荷風百句」を併録する。〈巻末エッセイ〉須賀敦子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
37
荷風が麻布に居を移してから5年間を過ごしました。ここで書かれた短編と随筆などがおさめられています。小説も随筆も麻布の町を思わせました。2024/01/07
goodchoice
3
作者の随筆の部分はやや散漫で面白みに欠けるが、短編風の部分は大正末期の風俗や考え方か色濃く漂い、人情溢れる様子が現在との対比で非常に興味深い。巻末の須賀さんが偏奇館跡を訪ねる下りは、大変貌を遂げた六本木の風景に驚かされる。誰が今、泉ガーデンタワーになっていると想像がつくだろうか。時代の流れとはいえ、風情のなくなり方があまりに無情だ。2018/09/26
はるたろうQQ
0
「麻布襍記」初版は、二千部印税624円であることが「断腸亭日乗」に書かれている。「雨瀟瀟」の冒頭、夜中雨漏りの音がするので家の中を手燭を持って探し回る件は印象的。雨がやみ蟋蟀が鳴きしきる中、夜一人で物思いに耽る最後の場面と対になっている。「写況雑記」も軽く書かれているようで、深夜の偏奇館、冬至や落葉の描写は味わいがある。「十年振り」は京都の幽静閑雅の趣を賞賛するが、「断腸亭日乗」には女性(秀梅)が大阪行の途中で尋ねてきて、三条通りの旅亭に憩い「深更秀梅寝乱れ髪のまゝにて大阪に赴きぬ。」とあって荷風らしい。2025/05/30
荏苒 byn
0
ざっきと読むとのこと。戦前焼失前麻布(六本木)で書いたもの集成。短編は他本で既読もあって、飛ばし読み。「花火」で、大逆事件批判。後半の雑文(隠居のこごと等)には、彼の尊敬する森鴎外の著作に触れること多し。森というと、必死の出世競争人物という悪印象。須賀氏跡地訪問の解説。余かれこれ30年前、探し歩きし覚えあるが、分明成らず。今は、表示板がある由1丁目6-1(写真381頁)。2018/09/26
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