内容説明
地球を発って十億年以上、もはや故郷の存続も定かでないまま銀河系にワームホール網を構築し続けている恒星船と、宇宙空間に生息する直径2億kmの巨大生命体との数奇な邂逅を描くヒューゴー賞受賞作「島」、かの有名な物語が驚愕の一人称で語られるシャーリイ・ジャクスン賞受賞作「遊星からの物体Xの回想」、戦争犯罪低減のため意識を与えられた軍用ドローンの進化の果てをAIの視点で描く「天使」――『ブラインドサイト』で星雲賞など全世界7冠を受賞した稀代のハードSF作家ピーター・ワッツの傑作11編を厳選。日本オリジナル短編集。【収録作】「天使」/「遊星からの物体Xの回想」/「神の目」/「乱雲」/「肉の言葉」/「帰郷」/「炎のブランド」/「付随的被害」/「ホットショット」/「巨星」/「島」/解説=高島雄哉
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
62
お目当ては“X”あの『遊星からの物体X』を異なる視点から語り直す…異質な存在は我々人類でありXはその存在矛盾を考察し人類に救済をもたらそうとする存在として語りかける。作者の共通のテーマは“意識”である。この短編集に於いてもAIに、異星人に、性癖に、自然現象に、死の瞬間に、人体改造に…手を変えて問いかけている。意識はある、果たして魂は存在しているのだろうか?人が死に至った後に肉体という意識の発生装置を失ってなお残る意識が存在するとは思えないのだが、作者はSFと云う検証手段で答えを出そうとしているのだろうか?2020/02/25
ニミッツクラス
19
19年の税抜1200円の初版を読了。著者の25作ほどある短編の中から11編をチョイス。日本オリジナルで邦題は「巨星」なのに英語表題は「島」を使用。映画版、ノベライズ版が元にある「遊星からの…」を読むと、内容が難しいのではなく著者の理系的筆致が面倒なのだと言う事が判る(笑) 巻末では“サンフラワー”Sの4編のうちの3編を時系列に配置した。乗組員とワームホール構築船のどちらが主体か読者の取りようだが、永遠とも言えるタームの扱いに幾分気の滅入る話。叙情的な「乱雲」は本書中では最初期(94年)の作品。★★★★☆☆2019/10/15
みき
16
ピーター・ワッツのストーリーの主題は、運命論と意識だ。自我のない知性や自閉症スペクトラムにおける知性の、闇雲に感じられる働きが実は世界の真実であって、意識や自由意志で自分や周りとの相互関係を操作していると考えている人々が見ている世界は、錯覚のようなもの。すごく面白かったけれど、前書きの解説なしには設定が飲み込めず読めない、という感じの没入したストーリが多い。2021/10/17
橘
14
ヒトならざるハードに意識が宿る。その意志が立ち上がる瞬間を、異なる正義が為される無限を、ワッツは短篇に凝縮してみせた!知性・意識・自立して思考するとは何か。生命の枠を超えて問い続ける、傑作ハードSF集。2019/09/20
緋莢
13
11編収録。6000万年以上前に地球を出発したワームホール構築船「エリオフォラ」が 登場する表題作含む11編収録。〝実験的意識”を 与えられ、実戦経験を通じて学習、急速に進化する無人軍用機「ドローン」を書いた 「天使」は、わずか20ページほどですが、中身は非常に濃密。「乱雲」は 雲が知性を持ち、人類に攻撃をしてくるようになった世界。多くの人々が地下に 移る中、娘と共に、主人公は地上にいて…設定にもおおっ!となりましたが 内容自体も非常に好みでした(決して明るい内容では無かったですが)2024/12/16