内容説明
セルバンテスとともに黄金世紀スペインの頂点に燦然と輝く不世出の劇作家ロペ・デ・ベガ(1562-1635).新しい演劇「コメディア」を創出した「才知の不死鳥」は,生涯に2200編の作品を残した.本作は中でも屈指の名作.オルメードの騎士ドン・アロンソとドニャ・イネースとの悲恋の物語は,不気味で妖しい美しさをたたえる.
目次
目 次
第 一 幕
第 二 幕
第 三 幕
解 説(福井千春)
訳 注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
116
オルメードの騎士と美しき娘の悲恋物語。筋書きは一見至って単純なものに見えて色々と不可解な、或いは未知数な要素の多い設定である。その核心は取り持ち婆ファビアの存在。彼女を介することでシンプルな相思相愛が不思議と拗れてゆき、ドン・アロンソの人物像が歪み、予兆的な俗謡を投入し、恋敵コンビがいつの間にか彼女の正体を知っていたりと、舞台裏の動きや具体的な設定を度々再考させる現象が散見される。これらの累積の上で「幻影」を出す効果は作者の狙いなのだろう。『ラ・セレスティーナ』をどこまで意識したのかは難しいライン引きだ。2024/06/27
Book Lover Mr.Garakuta
16
図書館本:昔の騎士道が、伺えて、面白かったですね。2021/04/10
壱萬参仟縁
12
初出1620-25?年頃らしい(2頁)。シナリオ。ドン・ペドロ(名家の当主)曰く、「人間の自由意志は時には天命にさえ、従おうとしないことがある」(110頁)。ドン・アロンソ(オルメードの騎士)は、「苦しみの中で慰められ 喜びの中で悲しみながら、もしやきみを失うことが ありはしないかと疑心暗鬼、激しい不安におびえるあまり――死の苦しみ悶えを胸に秘め――こうしてむなしく行ったり来たり」(190頁)。一部太字ゴシック体。2013/11/04
おくりゆう
8
スペインの古典的名作と言われる戯曲で作者のロペ・デ・ベガ氏は著名な方らしい…のですが、正直、初耳でした。解説にあるとおり、オルメードの騎士ドン・アロンソとドニャ・イネースの恋物語の筋は単純ですが、(多少長いものの)リズムのある言葉で進む物語は従僕、恋敵と何より取りなしの魔女の存在で妖しい熱気をもっていて面白かったです。2013/09/11
きりぱい
7
悲恋の物語とあったのに、まったく喜劇の様相で三幕でやっと悲劇に。魔女ファビアが思ったより邪悪に見えないので、結局は見えないところでドン・ロドリーゴを通してファビアの意図が通ったってことになるのかな。結婚にケチのつけようもない称えられるほどの立派な騎士なんだから、魔女に頼らなけらばこんなことにならなかったのに、という悲劇。知らなかったので新しめの作品かと思っていたら、15世紀末の戯曲体小説『ラ・セレスティーナ』の焼き直しで、実際はセルバンテスと同時代の古い作品だった。2016/03/30
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