内容説明
世界遺産・富岡製糸場の誕生秘話が満載!
初代工場長・尾高惇忠と娘・勇の感動の物語。
明治3年春、渋沢栄一の義兄、尾高惇忠は渋沢に富岡製糸場の初代工場長に就任するよう懇願された。
3年前に飯能戦争で官軍と戦い、弟を亡くしていた尾高だが、官営工場の必要性を痛感していたため、葛藤を乗り越えて工場長を拝命する。
だが、悪徳業者たちが質の悪い噂を流したため、肝心の女工が集まらない尾高は婚約が整ったばかりだった娘・勇を、女工第一号として製糸場へ連れて行く決意をする――。
明治の日本を支えた基幹産業・製糸業を隆盛へ導いた富岡製糸場の誕生には、彰義隊に集まった旧幕臣たちが深く関わっていた。
歴史の襞に埋もれた父娘の物語を掘り起こした傑作時代小説。
解説・田牧大和
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あおでん@やさどく管理人
34
明治の初頭に誕生し、現在は世界遺産となった富岡製糸場。日本の女工第1号ともいわれる尾高勇が仲間たちとぶつかりつつも成長していく「女の物語」と、上野・彰義隊での戦いから彼らなりの義を果たそうとした尾高惇忠や渋沢栄一たちの「男の物語」の両輪が描かれ、そのどちらにもドラマがある。富岡製糸場は前に一度行ったことがあるが、こうして歴史や工場の建物の魅力を知るともう一度行きたくなってしまう。2019/10/09
ちゃま坊
19
主人公は渋沢栄一ファミリーの尾高惇忠とその娘。明治維新を彰義隊、飯能戦争、函館戦争と経て、富岡製糸場の経営に関わる。明治といえば殖産興業だが、そこには渋沢の戦略がある。絹織物を輸出し日本の外貨獲得の目玉とする。そうやって先進国に追いつけ追い越せと坂を登っていった。もうひとつの坂の上の雲といえる。皆が去った後の富岡製糸場はどうなったのか気になる。2021/03/11
だけど松本
3
植松三十里は、これ好きだなと思う作品と、合わないと思うものと二つに分かれるが、これは好き植松だった。ただ後半意外とあっさりだった。2021/08/28
ザッハトルテ
1
富岡製糸場の立ち上げの物語。今ブームの渋沢栄一が建設推進し、製糸場の運営を任された尾高惇忠と長女勇を中心に物語が展開されるのだが、最初の女工集めから難題が…フランス人の飲む赤ワインが実は女工たちの生き血、なんて噂が広まっているのだから。富岡製糸場は数年前に見学したけど、今だに動きそうな機械が残っているのは素晴らしかった。ただ世界遺産登録前だったので周辺は未整備だったけれど。2021/10/11
いけだのどん
0
富岡製糸場の創成期である明治5年から9年にかけての小説。初代工場長の尾高惇忠の娘であり工女第一号でもある「勇」の目線で話が進む。ウィーン万博への出品や皇室の方々の訪問など史実にもあったことも織り交ぜながら、勇を含む様々なキャラクターも立っていて読みやすい。彰義隊との絡みもある。渋沢栄一の大河ドラマを見ていた人なら見覚えのある人物の登場もある。工女たちの青春ドラマのようでもあるので、実写化が無理ならEテレあたりでのアニメ化希望。2023/04/27