内容説明
失業の名人の私がやっともぐりこんだのは、ガラマサどんと仇名されるワンマン社長が一代で築いたビール会社。社長は立志伝を誇大に伝えようと、私を自伝作者に指名した。身近に接するガラマサどんの稚気と奇行、振り回される部下の困惑と狼狽。ユーモア小説の代表的名作に、昭和初期サラリーマンの哀歓を巧みにスケッチした『使う人使われる人』を加え、明朗小説の魅力を存分に伝える待望の一巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りりん
4
『きっとこの世界の共通言語は英語じゃなくて笑顔だと思う』という、ある曲の詩に私は共感を覚える。とはいえ、笑いの種類は様々だ。笑い所には国民性が現れるともいう。小説的笑いとはすなわち「ユーモア」だ。佐々木邦はそれを売りとするユーモア小説の開拓者。時代は古いが上質な笑いが待っている。かつて著者の本を読み笑っていた子供たちはすでにもう亡くなっている。生きていたとしても、お爺ちゃんだ。そんな作品に触れるとき、私はそのかつての子供たちと百年の時を超えて気持ちを同じくする。笑いは時代を超え、人を笑顔にする魔法である。2014/01/19
Honey
3
何だったか渡部昇一さんの本で言及されていたので読んでみましたが、いきなり面白い会話文体で…おしゃれなサラリーマン小説でした。普通にユーモア小説として楽しみながら、歴史的な風俗も垣間見れて、貴重な体験でした。2017/09/15