内容説明
大震災と身近な人の死をきっかけに「詩と本当に出会い、人生が変わった」著者が、人にとって詩はなぜ必要か、心と体に効く「詩を読む・書く」意味とプロセスを若い人に向けてやさしく語る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃちゃ
112
ぼんやりと霧がかかったような内なる「コトバ(こころの声)」は、「言葉」として表出することで、明確な輪郭と韻律をもって私たちの前に立ち現れる。これが、私の心に準備されていた「コトバ」なのか…。その出会いは少しばかりの戸惑いと感動を運んでくる。心の中にある「切なるもの」が詩になるのだと、若松さんは言う。そういえば私も母が亡くなったとき、溢れる「切なるもの」は、なぜか短歌の形で表れた。繰り返し歌に詠むことで、私は自らのグリーフケアをしていたのかもしれない。詩や歌には、そういう「力」が宿っているのだ。2020/07/31
しょうじ@創作「熾火」執筆中。
20
【1回目】10日かけて読了。かけがえのない読書体験となった。若松さんの著作は、全編が一つの「詩」であるように思う。形式にこだわらず、言葉にしえない、しづらい「想い」をこそ、言葉に託す。それが詩であるのだと私は読んだ。であるならば、誰にでも詩は書けるし、むしろ書かれなければならないものだと思う。そう日を置かずに再読できるようでありたい。2019/04/18
ロビン
17
批評家・随筆家で詩人でもある著者が、中学生からの質問に答える形で「詩」がどんなものであるのか、どんな心構えで書いたらよいのかを説いた本。隠喩がどうとかいう技法を説くのではなく、「詩」というものの神秘や本質に触れるお話が多く、詩人ならではの素晴らしい内容だった。若松さんはやはり言葉に対する感覚が鋭敏で、自分なりの言葉の定義も持っておられる。自分も拙い詩を書くが、ここまで言葉にこだわれていないし、明晰な言語化もできていないと感じ、己の未熟を痛感した。詩は「真剣に書く」ことが大切であるとの言葉を胸に刻む。2023/12/01
なおみ703♪
16
一日中若松氏の著作をむさぼり読んで、ラストの書。中学生に向けてと思いきや、ものすごく内容が濃い。詩を書くことを主眼に置いているが、純粋に紹介されている詩が心を揺さぶる。私は詩集といえば谷川俊太郎ばかりだった。この本を読んで、中野重治、茨木のり子、石牟礼道子、原民喜、宮沢賢治…の作品も味わいたいと思った。詩との出会いは「邂逅」である。ある意味を持って出会う、運命的な出会いでもある。2021/10/16
今庄和恵@マチカドホケン室/コネクトロン
11
詩というか言葉に全幅の信頼がおかれている様がよく伝わりました。詩とは自分と向き合うこと。こころの声を言葉にする、とありますが、言葉を紡ぐことによって正体のわからない感情の姿もはっきりとすることでしょう。「はじめに」にあった詩は永久保存版としてメモしました。詩という形式に限らず、言葉に関わる人は(言葉つかわない人はいないのだからきっとすべての人)言葉の威力を信用すべし。2019/05/21